パ高セ低

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[エッセイ 283]
パ高セ低
 
 プロ野球のセ・パ交流戦は、オリックスの優勝で144試合すべてを終えた。気の抜けたオープン戦がやっと消化され、待望の公式戦がいよいよ始まる。リーグ戦の再開を前に、プロ野球ファンはこんな心境にあるのではなかろうか。
 
 実力のパ、とは古くからいわれてきたことだが、今年ほどそれを実証した年はなかった。パリーグは6球団すべてが勝ち越し、上位6位までを独占した。優勝したオリックスは16勝8敗で勝率は6割6分7厘、パリーグ6球団合計では81勝59敗4分けで勝率は5割7分9厘であった。一方のセリーグは、最上位の巨人でさえ12勝12敗の5分、1チームも勝ち越すことはできなかった。最下位の横浜に至っては6勝18敗、勝率は2割5分というていたらくである。

 セ・パ交流戦は2005年にスタートした。その年と翌2年目は1チーム36試合ずつ、合計216試合が行われたが、2007年以降は1チーム24試合、合計144試合に減らされている。このセ・パ交流戦はスタート以来パリーグが圧倒している。この6年間の通算成績は、パリーグ6球団合計で508勝477敗、勝率は5割1分6厘、負け越したのは2009年の67勝70敗の1回だけである。この6年間の優勝チームはすべてパリーグの所属チームであった。

 セリーグの各チームは、どうみてもまじめにやっていたとは思えない。選手層も予算面でも、相対的にはパリーグよりもずっと厚く豊かなはずである。もしこれがセリーグの実力なら、各球団の幹部は総退陣しなければなるまい。公式戦の後半が始まっても、セリーグの実力の底が割れてしまった以上、ファンは果たしてどこまで本気で応援してくれるだろう。

 「巨人・大鵬・卵焼き」は固定されたものではなく、強さと魅力的なプレーがあってのものである。伝統と人気にあぐらをかいたままで許されるはずなど決してない。この辺で、前年の上位6チームを一部リーグ、下位6チームを二部リーグという実力主義に改めてはどうだろう。入場料はもちろんテレビの放映枠や放映権料といったものも、一部と二部で大きな差をつける。

 例えば、東都大学野球リーグには一部から原則6チームずつ四部まである。プロサッカーのJリーグは、一部は18チーム、二部は19チームで構成されている。大相撲は幕内(42名)、十両(28名)、幕下(120名)、三段目(200名)、序二段(248名)、序ノ口(68名)と6段階にも分かれ実力主義が貫かれている。なぜプロ野球だけが12球団並列のままのうのうとしているのだろう。
 
 昨年のワールド・ベースボール・クラシックの優勝をもって、日本は世界の頂点にあると考えるなら、もはや次の栄光は期待できない。ファンの求める大輪の花は、切磋琢磨と緊張感においてのみ約束される。
(2010年6月20日)