ざる菊

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[風を感じ、ときを想う日記](310)11/9
ざる菊

 住宅街の一角に、ザルギクと呼ばれる菊が整然と植えられている畑がある。その菊は、立ち姿がザルをかぶせたように見えることからそう呼ばれている。

 ここには、赤、白、黄色の株が全部で650株植えられている。株の大きさは、直径が50センチはありそうだ。それらの株は、直径2~3センチほどのかわいい花で覆われている。花の数は、一株当たり4千個にも及ぶそうだ。

 私たちの家族が、新築の公団住宅に入居してから40年以上が経つ。そこには、地方に転勤になるまでの10年間住んでいた。今の住まいは、そこから徒歩で10分ほどの所にある。その団地と駅の間は、当時から街路はきれいに整備されていたが、半分くらいはまだ畑のままだった。

 それらの空地は、年月とともに家で埋められ、いつの間にか立派な住宅街に生まれ変っていた。そんな街の一角に、生垣で囲われた畑がいまも残っている。500坪くらいはあるだろうか、メイン道路の交差点に面した一等地である。

 その畑に、昨年あたりから花が植えられるようになり、今年は畑全体が満開のざる菊で覆われた。個人の所有地だそうだが、自由に入って見てくださいという張り紙が掲示されており近所の人を楽しませてくれている。

 この日は休日の昼下がりだったが、訪れる人の大半は老夫婦であった。周辺の人口構成を象徴しているような光景である。