ご近所の転出

イメージ 1

[風を感じ、ときを想う日記](291)8/29
ご近所の転出

 青い上薬の塗られた日本瓦が4~5枚まとめられては、屋根から直接トラックの荷台に投げ込まれられていく。つづいて、大型重機が本体の解体工事に入った。すぐ隣に建物があるので遠慮がちにやってはいるが、それでも3日目の夕方には土台を残すのみになってしまった。

 この30年来、近隣同士として親しくお付き合いさせていただいていたご夫婦が、持ち家を売り払って引っ越していかれた。お子さんたち2人も巣立ったので、老後はマンションで気楽に暮らしたいといっておられた。家の解体工事が始まったのはその2日後である。

 べつに自分たちが住んでいたわけでもないが、見慣れた住宅が遠慮会釈なく壊されていくのを見るのはつらい。何ヵ月もかけて丁寧に建てられたはずなのに、壊す時はあっという間である。もっとも、新しい持ち主にしてみれば、邪魔になることはあっても古い家にはなんの未練もないはずである。

 この住宅地も、造成されてはや三十数年が経つ。当初は、子供の姿も結構見かけられたが、いまではご多聞にもれず高齢者の街になってしまった。一軒また一軒、いつの間にか代が替わり持ち主が変わっている。近所を見回しても、3軒に1軒くらいは新しい家に建て替わっている。

 解体中の家は、とうとう土台まで掘り起こされ、いま造成当時の姿に生まれ変わろうとしている。