猛暑

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[エッセイ 69](既発表 5年前の作品)
猛暑

 東京都心では、7月20日に39、5度という猛暑を記録した。この日、私も新橋でこの熱波に遭遇した。昼食のためビルから一歩外に出た瞬間、乾いた熱気に全身を包まれた。聞けば、湿度は26パーセントしかなく、こちらも7月の記録を更新したという。東京では、この夏、最高気温が30度以上の真夏日が40日間も続き、従来の37日間という記録をあっさりと更新した。
 
 この暑さのため、熱中症で倒れる人が続出した。厚生労働省の発表によると、仕事中に熱中症で倒れた人は7月だけで44名に達し、内4名が死亡したという。熱中症といえば、私も夏のゴルフでよく苦しんた。最初、軽い頭痛から始まる。徐々にひどくなり、お昼を過ぎる頃には限界に達する。芝目を読もうとしゃがみこむと、ガーンと激痛が突き上げてくる。それでも無理に続けていると、吐き気を催してくる。現実に、何度か嘔吐したことがある。30年位前の話、運動中は水を飲まないのが常識という時代であった。

 後年、熱中症は脱水が原因であり、吐き気は心不全の直前であると知りゾッとした。水分のこまめな摂取が必要と、好物のコーヒーとビールを頻繁に口にしたがまったく効果はなかった。無知とは恐ろしい、いずれも利尿剤であり脱水症促進剤であった。

 夏暑ければ、景気は一気に上昇気流に乗る。清涼飲料などの飛躍的な伸びに支えられ、7月のコンビニ既存店売上高は6、8パーセントも伸びた。エアコンがフル稼働に入るなど電力需要が急速に高まり、その消費量は12、5パーセントも押し上げられた。こうした傾向を受けて、民間の10社にも上る研究機関が経済成長率の予測をそろって上方修正した。畑では、これから収穫される果物たちが、強い日差しを受けて美味しさをしっかりと蓄えていることだろう。

 地球の平均気温が、この100年で0、6度上昇したという。異常に暑かったり寒かったり、集中豪雨や台風の襲来が続いたりと、振幅の幅を広げながらも温暖化は確実に加速していく。猛暑はさらに力をつけてやってくるだろう。地球温暖化の要因は、人口増加と経済発展がその底流にある。多くの地域が、都市化によって水面や緑を減らしアスファルトやコンクリートに変わっていく。おまけに、街はエアコンなど熱を放出する機器であふれている。

 猛暑の再来を防ぐには、あらゆる利害を乗り越えて地球温暖化防止対策を推し進めなければならない。地球規模の対策の一方で、地域レベル、個人レベルの工夫と努力も欠かせない。ビルの屋上緑化対策や打ち水も立派なアイディアである。扇風機の活用やノーネクタイ運動も再評価してみたい。苦痛や不便が伴うのはいつの場合も同じである。

 一人ひとりの努力が地域を守る。一つ一つの積み上げが、京都議定書の実行を促がし地球を救う。
(2004年8月22日)