季節よ、そんなに急がないで。

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[エッセイ 592]

季節よ、そんなに急がないで。

 

 今年は、最初から季節の変化が早かった。近所で、初めて河津桜の開花を見つけたのは1月16日だった。そして、1カ月も経たないうちにすべての木が満開になった。一番遅い引地川沿いのその並木でさえ、2月下旬には満開になっていた。それから1カ月後の3月下旬には隣接するソメイヨシノの並木が満開を迎えた。結局、河津桜ソメイヨシノも入学式までは待てなかったようだ。

 

 東海地方から西は、5月16日には梅雨入り宣言があったが、関東地方も実際には雨期に入ったようなものだ。梅雨入り前にやっておきたい冬物の片付けはもとより、各種行事や催し物の予定までがすっかり狂ってしまった。暦では、「入梅」は6月11日となっている。この辺りは、それより3~4日早いのが平均のようなので、実態は3週間ばかりも早まったことになる。

 

 このところの季節は、なんでそんなに急ぎたがるのだろう。急いでみたからといって特別いいことがあるはずもないのに。それとも、人間の仕業で地球の温暖化が進み、気候の変化にまで及んだためだろうか。本来なら、気候の変化は季節の移り変わりが一番の要因のはずである。そして、季節の変化は、地球の公転とその軌道に対する自転の軸の傾きによって起こるものである。

 

 地球は、太陽の周りを365.2422日で一回りする。地球自身も回転しているが、その回転軸は太陽に向かって23.4度傾いている。地球は球体のため、その表面は時期と赤道との距離によって太陽光の当たる角度が異なり、太陽エネルギーの届く量も変わってくる。エネルギーの届く量は、太陽との距離のほかに日照時間と太陽光が通過する大気の厚みも大きく影響している。

 

 このように、季節の変化をもたらす要因は46億年前の地球誕生以来一貫して変わっていない。これは宇宙がヒックリ返えらないかぎり変わることはない。一年のうちには必ず四季がある。季節の変化があるから気候が変り、それにつられて地域毎の天気も変わってくる。地球上の細かい変化は、宇宙の営みの枠の中でしか起こりようがない。夏と冬が入れ替わることなど絶対にありえない。

 

 もともと、季節は自然の定理に従って動いているはずである。もし、変化を早めているのが季節自身の本意でないとしたら、やはりその原因は人間にあるとしかいえない。一人一人の、ちょっとしたエネルギーの無駄遣いが積み重なって温暖化へと拡大し、気候や季節まで変えようとしているのかもしれない。

 

 気候の変化や季節の早まりが、花の時期のズレにまで及んでいるとすれば、その原因はやはり私たち一人一人の責任になる。入学式の記念写真には、やはり満開の桜がお似合いのようだ。まずは、日常生活の営みから生まれるエネルギーの無駄遣いを、極限まで引き下げることからチャレンジしてみてはどうだろう。

                      (2021年5月23日 藤原吉弘)