お盆の帰省

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[風を感じ、ときを想う日記](288)8/18
お盆の帰省

 その日、8月11日は、帰省のため朝5時に起きた。前夜から、台風9号の動きが気になっていたのですぐテレビをつけた。いきなり、「地震が来ます」と予報が流れ、続いて大きな揺れが襲ってきた。この間数秒しかなかったが、身を守るには十分な時間であった。

 外は大雨になっていた。台風がどうなっているか知りたかったが、テレビは地震のニュースに占領されその他のことは全く伝えてくれなくなった。ただ、画面の隅に流れるテロップで、羽田までの電車は正常に動いていることが確認できた。かねて用意のカッパを着こんで、ドシャ降りの中を駅に向かった。

 多少の遅れや混乱はあったが、結果的には予定していた時刻に実家にたどりつくことができた。日はすでに西に傾きかけていた。しかし、そこには私たちのための大きな仕事が待っていた。家の周りは夏草で覆い尽くされ、熱気を貯め込んだ室内には埃が積もりハエやゴキブリの死骸が散乱していた。明日、お坊さんが来るまでにはなんとかしておかなければならない。

 最低限のことだけ終えると買い物に出かけた。冷蔵庫は一年中稼働させているが、中にはビール数本と米の残りくらいしか入っていない。少なくとも、この夜と翌朝の食材くらいはすぐにも買い揃えなければならない。お盆のお花やお供えなどもこれから用意することになる。

 いつものことながら、お盆の帰省は、一年分の凝縮された非日常に巡り合える絶好の機会である。ご先祖様はもちろん、肉親や親類あるいは古い友人たちともまとめて再会することができる。お盆の期間を飛ばしたら、平素足しげく帰省していても、このようなチャンスにはめったに巡り合うことはできない。

 今回も、母、長男とその家族、妹とその家族、家内の関係も含めた親類やそれに続く人たち、私や家内の古い友人たち、そして古くからの知人にもたくさん会えた。盆踊りも終わりまで見物できた。参加者も少なくなり寂しさは隠しようもないが、それでもたくさんの古い知り合いに会うことができた。

 長男とその家族は8年ぶりの帰省なので、新しくできた観光施設などにも案内しておきたかった。できるだけ多くの親類や知人にも会わせたかった。それに、下の孫は誕生日に当たっていたので、そのお祝いもしてやりたかった。そういえば、長男自身も7月末が誕生日だ。遅ればせながら、それもお祝いしてやれば喜んでもらえるはずである。

 中4日はあっという間に過ぎた。この間、新たな出会いもあった。古くからの絆も確かめあうことができた。それでもまだ、なにか忘れ物でもしているような物足りなさが残った。おそらく、年々寂れていく故郷の姿に、やりきれなさを感じているためであろう。

 ご先祖さまを無事お送りし、私たちも帰宅の途についた。自宅では、迷惑メール480通と6日分の新聞の山が待っていた。