端午の節句

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[エッセイ 57](既発表 5年前の作品)
端午の節句

 イラクの復興支援に活躍している自衛隊が、子供の日にちなんでサマワのユーフラテス川にロープを張って、こいのぼり200匹を泳がせたそうだ。世界四大文明の一つが花開いた大河に、それも名実ともに殺伐としたイラクにこいのぼりとは、史上まれに見る文化的な快挙といっていい。

 5月5日は子供の日、いや端午の節句である。床の間に鎧兜や武者人形を飾り、庭のポールにはこいのぼりを泳がせる。菖蒲風呂に入り柏餅をほおばる。男の子の健やかな成長と出世を願っての親心が形になってあらわれたものである。これからも、子供の日にぜひ引き継いでいきたい古きよき習慣である。

 端午の節句は、桃の節句などとともに現代に伝えられた五節句の一つである。中国で生まれ、奈良時代に日本に伝えられた。端午とは、月の初めの午(うま)の日を指しており年12回あった。午(ご)は五に通じることから午の日から五の日に変化し、さらに五が重なる五月五日に絞られていったようだ。

 最初は宮廷や貴族の行事であったが、それらの勢力が凋落するとともにだんだんと廃れていった。一方、武家の台頭とともに、鎌倉時代以降武家中心の行事となってきた。よろいかぶとや武者人形あるいは吹流しなど武士の強さを象徴するものが好まれたのもそのためであろう。江戸時代になるとこの行事は庶民にも普及しはじめ、元気の象徴である金太郎やこいのぼりが登場してきた。

 総務省が発表した4月1日現在の、15歳未満の子供の推計人口は、前年より20万人少ない1781万人で、23年連続の減少となったそうだ。総人口に占める子供の割合も前年比0、2ポイント減の13、9%と30年連続の減少となったようだ。

 諸外国と比較してみると、トップクラスのイタリア(14、3%)やスペイン(14、5%)と並ぶ世界最低水準となっている。将来にわたっていろいろな意味でライバルと目される中国(22、4%)、米国(21、0%)、あるいは韓国(20、6%)などを大きく下まわり、日本の活力低下が深刻なことを裏付けている。

 なぜこうも少子化が進んでしまったのであろうか。生物の最大の課題は、子孫を増やし繁栄させることである。人も、それを達成することに最大の生きがいを求め、それが達成されたときに無上の喜びを感じるはずである。文明の発達や価値観の変化、あるいは環境破壊の進行による生殖機能の低下など、少子化の理由は挙げればきりがない。しかし、何億年もかけて創り上げられてきた生きものの繁栄の仕組みが、わずか数十年で劇的に変化するはずがない。

 子供は社会の宝である。人々は、元気にかけまわる子供達の姿にこそ、真の繁栄と将来の発展を実感するはずである。
(2004年5月7日)