葉ザクラ

イメージ 1

[風を感じ、ときを想う日記](262)4/18
葉ザクラ

 頭上から、紅がかった白い花びらがヒラヒラと舞い降りてくる。花びらは、そよ風に吹き寄せられ、側溝の脇にピンクの吹きだまりをつくる。あれだけみんなにもてはやされたソメイヨシノも、盛りを過ぎると途端に葉ザクラといってさげすまれる。

 たしかに、褐色に変化した宴の跡はお世辞にも美しいとはいえない。その醜く変わりはてた枝先が、いま劇的な変化を遂げようとしている。新しい命の爆発である。樹皮がはじけ、緑の新芽が吹き出そうとしているのだ。

 過ぎゆく春を惜しもうと、ひとり引地川親水公園に出かけてみた。ここは風が南北に吹き抜けるせいか、森に囲まれた大庭城址公園より4~5日遅れて盛りを迎える。まだ、葉ザクラというにはかわいそうな美しい姿をとどめていた。

 ふと、流れの方が騒々しいのに気がついた。近寄ってみると、鯉たちが産卵の真最中であった。昨年はそれに出くわすチャンスを逸したが、一昨年のこの日記には、5月6日にそれに遭遇したと書いている。なんと、半月以上も繰り上がったことになる。

 熱海桜で幕を開けたわが家のサクラ見物は、いま八重桜で3ヵ月に及ぶシーズンの幕を閉じようとしている。桜も鯉たちも、季節の移ろいとともに定めに従って粛々と新しい命へとつないでいく。