真駒内公園

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[エッセイ 78](既発表 4年前の作品)
真駒内公園

 鈴なりに実をつけたななかまどの群落が真赤に染まっている。初冬のたたずまいを見せはじめた園内では、すでに白樺や銀杏が黄色いじゅうたんを敷きつめていた。錦秋の名にふさわしい華やかな光景の傍らに、無数の倒木が醜い姿をさらしている。台風18号のつめ跡である。

 昨年から、ある企業グループの社員研修で、ここ真駒内(まこまない)公園をたびたび訪れるようになった。札幌の中心街から南へ約8キロ、豊平(とよひら)川と真駒内川の合流点に位置するこの場所は、北海道酪農の発祥の地として早くから知られていた。

 この地に、明治百年記念森林公園を整備すべく、昭和42年から工事を始め同50年に開園にこぎつけた。この間、昭和47年には札幌で冬季オリンピックが開催されることになり同園がメイン会場となった。入り口近くに整備されたスタジアムや屋内競技場は、今も立派に活躍している。

 用地の広さは約85ヘクタール、日比谷公園の5倍はあるという。真駒内川が園内を流れ、西南の丘陵部には豊かな自然林が広がっている。余分な手を加えず、自然を生かしながら適度な広さの芝生広場を各所に配置している。樹木の数は、人工的に植えられたものが約1万3千本、自然木が5万本に達するという。目につく人工施設といえば、外周道路とそれを縦横につなぐ数本の連絡道路、それに7、8個所はあるとおもわれる立派なトイレくらいである。

 私が前回訪れたのは9月中旬であった。一歩公園に足を踏み入れて仰天した。ポプラや針葉樹の大木たちは、その多くが幹の途中からへし折られていた。白樺やななかまどなどのうち、被害にあっているものはほとんどが根こそぎ倒されていた。場所や樹種によって大きな違いはあるが、倒されたりへし折られたりしたものは全体の2割を超えているのではなかろうか。公園全体で6万本植わっているとすれば、1万2千本以上の樹木が被害にあったことになる。

 道路に横たわるなど邪魔なものや危険なものから順次片付けられてはいるが、あまりの数に後始末は遅々として進んでいない。もうすぐ雪の季節がやってくる。後片付けだけで来年いっぱいはかかりそうな雲行きである。倒された木を重機で掘り起こし新しい木に植え替えていくとなると、数年の歳月が必要になりそうである。9月7日に西日本で大きな被害をもたらした台風18号が、翌日こんな北の方にまでやって来て、なおこれほどのつめ跡を残していくとは。

 7度かまどにくべても燃えきらないといわれるほど強靭なななかまども、そのひと吹きで根こそぎ倒されてしまった。自然の恐ろしさを実感させられる無残な悲しい光景である。自然豊かな真駒内公園が、その自然を早期に再生させることを祈るばかりである。
(2004年11月8日)