尿酸値

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[エッセイ 103](既発表 3年前の作品)
尿酸値
 
 ここ一週間、晩酌は「その他の雑酒◆廚魍擇靴鵑任い襦ビールに含まれている麦芽が、私の健康にはあまりよくないと聞き、大豆たんぱくなどが主原料のいわゆる第三のビールに切り替えたためである。
 
 先月受診した健康診断によると、検査データはおおむね良好であった。しかし、ただ一つ、尿酸の値だけが基準の七ミリグラムからかなりはみ出していた。このまま、今までの生活を続けていると、ある日突然、痛風の発作がおそってくるかもしれないという恐ろしいご託宣があった。痛風になると、風が吹いただけで飛び上がるほど痛いそうだ。
 
 痛風は、尿酸が体内に蓄積して血液や関節液の中で増え、それが組織に沈着しておこる病気である。その現象は、関節や皮下、腎臓などに多く現れる。尿酸は、通常は体内で一定量に保たれているが、そのバランスが崩れて過剰な状態になると、痛風を引き起こす原因となる。そうした要因は、肥満、ストレス、プリン体の食品からの過剰な摂取、遺伝的体質などさまざまである。

 この尿酸、プリン体代謝分解によって生まれる最終的な産物である。したがって、プリン体のコントロールが尿酸のバランスを維持することになり、痛風の予防につながる。そのためには、プリン体の分解と体外排出の役割を担う腎機能をいっそう高める必要がある。その一方、プリン体そのものをなるべく体内に取り込まないよう注意することも肝要である。もちろん、水分をどんどんとって、頻繁にトイレに通うのも立派な予防策である。
 
 プリン体とは、細胞の中にある核酸を構成する成分の一つである。核酸は遺伝に関わる物質で、あらゆる生物の細胞に含まれている。したがって、細胞数が多いものには当然それが多く含まれている。食品では、精巣、卵巣、内臓、そして乾燥によって細胞が凝縮されている干物などが該当する。ビールにはプリン体が多いという話をよく耳にするが、これは、麦芽に比較的多くのプリン体が含まれているためである。モツの煮込みとビールでにぎやかに、などというスタイルはあまりおすすめできないことになる。
 
 私は、毎日の晩酌にビールを欠かしたことがなかった。こう暑くなると、なおさらのことである。しかし、痛風の恐怖には勝てない。検査結果が出て以来、それに代わるアルコール飲料を探しつづけた。ウイスキーの水割り、泡盛オンザロック、お燗をした紹興酒、そして各種缶チュウハイ。しかし、どれ一つとして私を満足させてくれるものはなかった。どうしてもあの泡の立つお酒が飲みたかった。

 こうして、大豆たんぱくを主原料にした「その他の雑酒◆廚私の大切な友だちとなった。そして、わが家の酒代は半分に減った。
(2005年7月30日)