青梅

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[エッセイ 19](既発表 5年前の作品)
青梅

 このシーズン、八百屋の店先には青い梅がたくさん並ぶ。それらは、各家庭で作る梅酒用として売られている。梅雨の季節を迎えたことを実感させる風物詩でもある。
 
 わが家には、実のなる梅の木が1本ある。豊後梅といい、わが家に来たときすでに壮年に達していた。それからさらに22年、まさに実年の働き盛りである。先週の日曜日、その梅を収穫したが、数日の遅れでそれらは少し黄色くなりかけていた。

 今年の収穫量は僅かに5キロであった。昨年の18キロに比べるといかにも少ない。果物には、豊作の年と不作の年、つまりたくさんとれる年とそれほどとれない年があることは知っていたが、これほどひどい状況になるとは想像もしていなかった。

 例年、我が家でとれる梅は全部を使い切ることができないので、知り合いの数人に分けてあげていた。しかし、今年はそれらの人の期待に応えることができない。そう思っている矢先、その1人から電話があった。結局、4キロをジャムに、残りのわずか1キロをその電話の主にあげることにした。
 
 その日、家内は早速ジャム作りを始めた。もちろん私も手伝った。梅をよく洗い、それらを大きな鍋でさっと茹でる。それを金網のザルで裏ごしして、果肉の部分だけを取り出す。再び大きな鍋に戻し、2キロの砂糖を加えてトロ火で約1時間煮詰める。どろどろになったところで、塩を少し加えて火からおろす。これで、1年間食べることのできる梅ジャムができあがった。
 
 梅は、ふつう梅干か梅酒として利用される。しかし、梅干作りは素人には難しすぎるし手間もかかる。梅干を作るには、梅の実が黄色く熟すまで木に置き、とりいれてからは天日干しを繰り返す。しなしなになったところで塩と紫蘇で漬け込む。

 ある年試してみたが、塩辛くやたらと酸っぱい味に仕上がった。子供のころよく味わったあの懐かしい味ではあるが、最近の市販品には遠く及ばない。それにひきかえ、梅酒は作るのは簡単だし健康にもいい。しかし、私の食前酒としては甘すぎとても口に合わない。家内が精を出して毎日のようにやってはいるが、元が下戸なのでその量は薬の域を出ない。
 
 わが家では、ヨーグルトにイチゴなどの甘いジャムを入れて朝食として食している。ここ数年は、もっぱら自家製の梅ジャムがその代役を果たしている。梅ジャムは酸っぱいしヨーグルトもすっぱい。どうも、男性は一般的に酸っぱいのが苦手なようであり私もそうであるが、梅ジャムとヨーグルトを混ぜるとなぜか酸っぱさが程よい加減となり結構いけるようになる。
 
 これで、今年もうまい朝食が食べられる。
(2003年6月17日)