梅、大豊作

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[エッセイ 372]
梅、大豊作

 庭のブンゴウメ(豊後梅)は、例年たくさんの実をつけてくれる。杏(アンズ)と梅(ウメ)の間種といわれるように、花は八重で果実は大きく豊かである。わが家では、その実で梅ジャムを作り、朝食のヨーグルトに混ぜていただくことにしている。あまり手をかけてやらないせいか、収穫量は年によって大きく変動する。今までの最高記録は18キロ、最低は昨年の5キロだった。

 今年は、開花のときから順調だった。花の量も、実がついた後も、木全体に勢いがあった。下から眺めているだけで、豊作の期待が膨らんでいった。一週間前あたりからは、日当たりのいい場所に色づきが見られるようになった。ジャムにするには、なるべく熟させた方がいいので落果寸前まで待つことにした。

 昨日、服装を整え、梯子を持ち出して木に登った。そこは、下から見上げた時よりはるかに豊かだった。まさに鈴なり、粒は大きく艶やかで、熟れ具合もちょうどよかった。片足を梯子に、もう一方を枝にかけて踏ん張りながら収穫を続けた。採っても、とっても、豊かな実りが葉っぱの陰から次々と現れてくる。昨年が貧弱だっただけに、今年のその量には目をみはるばかりである。

 やっと地上に降りることができた。疲れた。さっそく収穫した梅の総重量を測ってみた。27.7キロ。この梅の木がわが家にやってきて三十数年、来たときすでに立派な成木だったがこれだけ多くの実をつけたことはなかった。わが家の、最高記録の1.5倍、昨年のなんと5.5倍にも上る。

 私が収穫にと取り掛かると同時に、家内はジャム作りの準備に入った。収穫した端から、梅の実2キロずつを大きな鍋で茹でる。茹であがった実は、裏ごしして種と余分なかすを取り除く。2鍋分の果肉をもう一度大鍋に戻し、アクをすくい取りながらさらに煮詰める。そこに白砂糖2キロを投入し、よくかき混ぜて冷ませば梅ジャムの出来上がりである。

 ジャム作りが終盤を迎えようとしているとき、友人から教わった別の方法を思い出したと家内が言い出した。実を茹でる前に、金槌でたたき割って種を取り出すのだそうだ。さっそく選手交代し、最後のロットは私が金槌を振った。種がない分煮詰める量は大幅に減ったが、出来上がりの滑らかさにおいては今までのやり方の方がよかったようだ。

 収穫量の半分近い12キロをペースト状に変身させたところでジャム作りはおしまいにした。残りは梅酒と梅サワーにしようと、ホワイトリカー1.8リットルと氷砂糖1袋、それに米酢1.8リットルを買いに走った。

 梅の実の山はあらかたさばけた。それでも、大きく膨らんだスーパーのレジ袋はまだ3個残っていた。家内は、友人たちに次々と電話していた。
(2013年6月12日)