e-Tax

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[エッセイ 201](新作)
e-Tax
 
 納税シーズンが近づくと、税務署から確定申告の用紙が送られてくる。確定申告は、年金受給者には必ず付いてまわる作業である。もっとも、従来から医療費の還付請求をしているので、わが家にとってはおなじみの作業ではある。
 
 今年届いた税務署からの便りでは、「e‐Tax申告」が奨励されていた。「e‐Tax」とは申告方法の愛称で、インターネットを利用して確定申告をすることである。役所の指導どおりに行うと、データの入力や検算の手間が省けるなど税務署にとって大きなメリットがあるようだ。

 そのためか、この方法で申告すれば私たちにも特典が与えられるという。最高5,000円の税額控除(1回限り)、源泉徴収票や医療費の領収証など証憑類添付義務の免除、それに早期優先処理の三点である。

 私もインターネット愛好者の一人なので、それにチャレンジしてみることにした。さいわい、この手続きで最初に必要となる「電子証明書付きの住民基本台帳カード」は、つい先ごろ市役所で取得したばかりである。あとは、その住基カードを読みとる「ICカードリーダライタ」という機器を用意すればよい。

 この機器は、3,000円程度で電器店ならどこでも売られているという。どうやら、税額控除の5,000円はこれの見返りらしい。ところが、近所の大手チェーン店には、カタログは届いているが現物は入荷していなかった。いまが商機なのにね!とつい嫌みが口をついて出た。

 実は、私には一つ心配なことがあった。今使っているパソコンはかなり古いので、その基本ソフト(OS)では対応できないかもしれないのだ。その場でカタログを確かめた。対応できるOSはWindows98SE以降とはっきり表示されていた。前世紀の遺物を使っているわけではないのに、やはり無駄足であった。

 その足で、手書きの申告に必要な医療費の集計用紙をもらうため、近所の市民センターに出向いた。規定用紙を使いたいと思ったが、税務署から届いた封書にそれは入れられていなかった。

 確定申告関連の用紙が並べられている棚を探したが、お目当ての集計用紙は見当たらなかった。市の職員に聞いてみたがその存在すら知らなかった。仕方なく税務署まで足を伸ばした。署員にその旨を告げると、用紙はインターネットでも取り出せますよという返事が返ってきた。

 結局、今年も手書きの申告書に、400グラムにも及ぶ領収証を添付して郵送した。役所側は便利にしたつもり、私たちもそうなったと信じていた。しかし、現実にそうならなければストレスがたまるだけである。いま愛用のパソコンを使うかぎり、これからも手書きの申告を続けなければならない。
(2008年3月16日)