雷雨の中のゴルフ

イメージ 1

[エッセイ 172] (新作)
雷雨の中のゴルフ
 
 最近、よく雷三日という言葉を耳にする。一度大気が不安定になると、それが3日くらい続くということである。単にお天気が悪いというだけでなく、落雷や突風あるいはヒョウなどを伴うことが多い。
 
 今回も、前週木曜日あたりからそのような状態に入った。日曜日には、高校同窓生によるゴルフコンペが予定されていた。ゴルフと雷はことのほか相性が悪いので、そのような天候からは早く抜け出してほしいと願っていた。

 期待もむなしく、NHKの前日の予報は雷雨を告げていた。しかし、心配で眠れない夜が明けてみると、東の空は茜色に染まり、小鳥たちはさわやかにさえずりあっていた。なにか、すごく儲かった気分になった。

 1番ホールの前にみなが集まるころ、雲間からは薄日が差していた。このままもってくれるといいね。みんなの一致した気持ちだった。3番ホールに差しかかるころ、西の空が急に暗くなってきた。遠雷もはっきりと聞こえるようになった。しかし、風は手前から西方向に吹いている。大丈夫だろう。

 4番ホールの途中で、オデコに雨粒を感じた。見上げると、いつの間にかずいぶん暗くなっていた。上空をジェット機が通過するような音も聞こえている。と、見る間に雨が激しくなり、雷の音も近くに感じられるようになってきた。

 誰かが、携帯電話でクラブハウスに様子を問い合わせた。「まだ大丈夫です、危険が近づいたらワゴン車で迎えに行きます」。そんなやりとりの間にも、雨脚はいよいよ激しくなり、雷の音も間近になってきた。

 稲妻が走り、ドーンというすごい音が響いてくる。しかし、相変わらずクラブハウスからはなんの連絡もない。私たちのプレーは恐怖の中で続けられた。誰か一人くらい犠牲者が出ないと、中止の指示は出ないのだろうか。突然、また近くで大きな音がした。

 もうこれ以上は無理だ。前半の2ホールを残して、私たちはクラブハウスに引き上げた。他の人たちも中止したらしく、レストランは大変な混みぐあいであった。時間があるので、この後どうするかは様子を見ながらゆっくり決めればいい。それにしても、衣服が濡れて寒さが止まらない。

 1時間余りが過ぎたろうか。雨が小粒になり、空がしだいに明るくなってきた。しかし、続きをやるかどうかはまだ決めかねていた。すっかり気持ちがなえてしまっていたのだ。

 再開は最年長者の一言で決まった。夕陽が西に傾きはじめたころ、全員がホールアウトした。悪条件にもかかわらず、みな結構いい成績だった。

 それにしても、命がけでやるほどのスポーツではあるまい。
[2007年6月11日]