障子

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[エッセイ 41](既発表 3年前の作品)
障子

 やっと障子の張替えが終わった。これで気持ちよく正月を迎えることができる。部屋がパット明るくなり、まるでリニューアルしたかのようだ。今までとはまったく違う雰囲気に、とまどいと居心地の悪ささえ感じてしまう。

 わが家には和室が2間あり、それぞれ2方向に障子がはめられている。小窓用の小さいものまであわせると全部で12枚になる。これらを全部張り替えるのはそれなりに大変な作業である。
 
 まず、障子を敷居からはずして庭に出す。バケツを台にしてその上に載せ、水をかけて紙を濡らす。水が十分に浸透したところで、濡れた古い紙を竹の棒に巻き取っていく。あとは、桟の汚れを十分に拭き取り乾かす。

 水にひたしておくと桟の汚れやアクがよく落ちるが、当家にはそのようなスペースはない。逆に、狂いが生じて立てつけが悪くなる恐れがあるので、あまりやらない方がいいのではなかろうか。
 
 桟が十分に乾いたところで全体に糊をつけ、巻紙状になった大きな和紙を一気に伸ばして貼り付ける。両端をセロハンテープで固定し乾くのを待つ。生乾きの状態のところで、紙の余分な部分をカッターナイフで切り取る。糊が十分に乾いたところで、霧吹きで紙全体を湿らせる。仕上がったとき、紙がぴんと張られた状態になるようにするためだ。

 子供のころも障子張りはよくやらされた。その当時との違いは、糊付けの方法と紙の規格くらいで進歩はほとんど見られない。そのころは、小麦粉をうすく溶いて煮詰めた糊を刷毛で桟にぬっていた。今は、ビニールチューブに入った糊を絞り出しながら桟をなぞるだけ。小さな穴から筋状に出てくる糊がまんべんなくぬられていく。

 障子紙も、当時は小さくカットされたものを障子1枚につき6枚も貼っていかなければならなかった。今では、巻紙を一気に伸ばせば1回できれいに貼りあがる。

 新しく張りかえられた障子は、透きとおる冬の光をやさしく包み込み、私の部屋をさらに落ち着きのある雰囲気に変えていく。木と和紙で構成される障子は日本文化の象徴的存在であるが、平安時代までのものは襖障子であって、採光を考えた明かり障子は鎌倉時代以降になって生まれたものだそうだ。

 障子は破れやすいのが難点である。破れないまでも、だんだん黒ずんできてみすぼらしくなり部屋も暗くなる。年の暮れくらい、古くなった障子紙は、いやな思い出とともに破り捨てるべきだろう。昨今は、年の変わり目もだんだんメリハリがなくなってきた。

 新しく張りかえられた障子の部屋で、新年の決意を書き初めにできれば、案外おしゃれなお正月になるのではなかろうか。
(2003年12月16日)