[風を感じ、ときを想う日記](58)12/21
通行方向
昨12月20日付け日経新聞夕刊に、世界途中下車というエッセイのシリーズが載っていた。今回のタイトルは「右側通行、左側通行――欧米」、筆者はフォトジャーナリストの櫻井寛氏である。
私にとっては大変興味深いテーマなのですぐに飛びついた。その前半部分は次のとおりである。
――船と航空機は国際法によって右側通行と定められている。もちろん全世界中である。このルールを守らないと衝突してしまうからだ。
ところが鉄道と道路は各国まちまちだ。英国や日本のように鉄道も道路(自動車)も左側通行の国があれば、ドイツやロシアのように鉄道も道路も右側通行の国もある。はたまたフランスやアメリカなど、鉄道は左側、道路は右側通行の国もあるのだ。――
ここまで読んで、「ン?」と思った。フランスにもアメリカにも行ったことがあるが、体験的にそうではないと気がついたからだ。特に地下鉄では、行く方向によって入口が違うことがあるので、通行方向には神経質にならざるをえない。それを体がしっかりと覚えていたわけである。
フランスは、パリ周辺しか知らないが、市内ではRATPといわれる地下鉄にずいぶんお世話になった。また、ヴェルサイユ宮殿の観光にはRERと呼ばれる地域高速鉄道を利用した。たしかに、テレビで見かけるTGVと私が乗ったRERは左側通行であるが、パリの地下鉄はいずれも右側通行であった。
アメリカでは、アムトラックという特急列車で、ニューヨークからワシントンまで行ったことがある。ニューヨークでは、子息が郊外に住んでいるので、そこからメトロ・ノース・レイルロードという近距離電車を使ってグランド・セントラル駅まで出かけた。マンハッタンではもっぱら地下鉄を利用した。このアメリカでは、ワシントンとロスアンゼルスの地下鉄にも乗った経験がある。例外はあるかもしれないが、アメリカは鉄道も道路も右側通行のはずである。
この記事について家内に話をしたら、たいしたことじゃないじゃない、という返事が返ってきた。たしかに、たかが夕刊のエッセイである。気楽に読み過ごせばいいのかもしれない。しかし権威が売り物の日経新聞である。まして、主題そのものに勘違いがあったのでは、記事全体がぐらついてしまう。まさかこの記事によって衝突事故がおこるなどということはないにしても、それがもとでパリで迷子になってしまうなどということはあるかもしれない。
記事の影響は、新聞社自身が考えているよりはるかに大きいことを認識いただければさいわいである。
追伸
昨日、新聞社にこのことについて連絡しておいたら、先ほど編集部から返事をいただいた。
次の号で訂正記事を掲載するとのことである。
訂正??記事(12月27日 日経夕刊)-写真家?ピントは?-
「右側通行、左側通行」と題した12月20日付けの記事には多くの方からご意見をちょうだいした。 中には筆者の知らないこともあり、大いに勉強させていただいた。御礼申し上げたい。さて、・・