山手トンネル

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f:id:yf-fujiwara:20211116152634j:plain[エッセイ 611]

山手トンネル

 

 しばらくご無沙汰していた高校同窓生のゴルフコンペに久し振りに参加した。会場は、荒川の河川敷にある赤羽ゴルフ倶楽部である。会の発足以来、ここをホームコースとして使わせてもらっている。私も、現役のときからずっと参加させてもらっている。わが家からはずいぶん遠いが、これだけ長く続けられているのは、仲間が同郷・同窓生という気安さと、河川敷で料金が安いためである。

 

 片道約80キロ、都心を通り抜けての参加はそれなりに大変である。初めのころは、横浜新道から横羽線羽田線、5号線と乗り継ぎ、板橋本町で降りて国道17号線を浮間舟渡まで通していた。そのうち、狩場線が開通したり湾岸線が全通したりして、狩場―有明箱崎経由の遠回りルートを使うようになった。ただ、帰りは見晴らしのいいレインボーブリッジで湾岸線に出るようにしていた。

 

 永らく、この遠回りルートを使っていたが、5年前に山手トンネルが完成して以降、そのルートは一変することになった。湾岸線の大井と板橋本町が直接結ばれたのだ。この間約18キロ、時速70キロで走っても20分くらいで通り抜けてしまう。ただ、帰り道はその最短ルートにすぐ変更できたが、往路は入り口がわかりにくく、うっかり通り過ぎてたいていは箱崎経由になっていた。今回、大井で慎重に見極め、往復ともに初めて山手トンネルルートを使った。

 

 その山手トンネルは、首都高速中央環状線の一部をなす。このトンネルは、JR山手線の外側、大半が山手通りの下を刳りぬいて作ったものである。1992年に着工し、2015年3月7日に完成した。全長18.2キロ、関越トンネルの11キロを押さえて日本一長く、世界でも2番目の長大な道路トンネルである。首都高全体の混雑緩和に大きく貢献し、経済効果は期待以上になるのではなかろうか。

 

 山手線の外側ではあるが、建造物は都心なみの混み具合である。例えばこのトンネルは、地下で9本もの鉄道と交差している。地表との間には3本が、この下には6本もの地下鉄が横切っている。上下左右にくねくねと曲がっているのは、最後に登場したためそれらを避けて通らなければならなかったためだ。

 

 この山手トンネルは、私にとって使い勝手はいいが、使い心地はあまり芳しくない。往復それぞれが別々のトンネルであるため、片側2車線であっても空洞の断面は狭くかなりの圧迫感がある。急カーブあり、アップダウンありで、前方だけをジッと見つめて運転するには注意力と根気が要求される。見晴らしのいい開放的なレインボーブリッジと比べれば、まさに雲泥の差である。朝、ルンルン気分でゴルフに向かう人には、とてもお勧めできそうにないルートである。

 

 それでも、このトンネルのお陰で、飛躍的に便利になった首都高に、疲れ果てる前に自宅に帰り着けるようになった道路事情に、心から喝采を送りたい。

                     (2021年11月16日 藤原吉弘)