八重洲会

[風を感じ、ときを想う日記](23)4/16
八重洲

 私は、東京駅の前にある小さな会社で、社会人としての第一歩を踏み出した。まだ会社としての体をなしていなかったが、世間では伸び盛りの注目株として通っていた。

 その会社は、八重洲のちっぽけなおんぼろビルに本社を置いていた。私たちは、日本橋の新しいビルに移転するまでの約10年間、あまり快適とはいえないそのビルで勤務した。
 
 昨日、その当時の仲間たちが集まった。場所はもちろん八重洲、一応名の通ったホテルである。ここに年1回集まるようになって10年近くになる。

 自然発生的に生まれた会なので、規約などというかたぐるしいものは一切ない。あるのは八重洲にちなんだ会の名前だけである。都合のつく人だけが集まり、昔話に花を咲かせて帰っていく。みなリタイア組なので、それで十分満足である。

 私も含め、来年も同じ顔ぶれが揃うことを期待したい。