―ピンピンコロリを究めよう―     [その4] ピンピンコロリの難しいわけ

[エッセー 658] ―ピンピンコロリを究めよう―[その4]

ピンピンコロリの難しいわけ

 

 これまで、ピンピンコロリを究めるために角度を変えながらいろいろと考えてきた。ここでは、なぜそれが難しいのか、その理由を探っていきたいと思う。

 

 ヒトの寿命は、およそ120歳が限界だろうといわれている。細胞分列の回数には限界があることから、その理論的な根拠に基づいて推計したものだそうだ。それを裏付ける実績として、長寿の公認世界記録がある。フランス女性のジャンヌ・カルマンさんが1997年に122歳で亡くなったときの記録だそうだ。

 

 寿命の限界ともいえるこの120歳を基準に、日本人の平均寿命と比較してみると、男性は38年、女性は32年ほど短い。健康寿命との差に至っては、男性が47年、女性は44年も短い。こんな大きな差は、ある意味で不適切な生き方をしてきた結果といえなくもない。ヒトはなぜそんな生き方をするのか、その原因を突き詰めていけば、寿命を延ばせるヒントが浮かび上がってくるかもしれない。以下、命を縮めていると思われる原因を思いあたるままに列挙してみた。

 

 まずは住環境から点検してみよう。最初に考えられるのは、寒暖差の大きい寒冷な場所ほど血圧などへの悪影響が大きいのではなかということだ。寒い地方やすき間風の通る家だと、塩分の取り過ぎによる高血圧やお酒の飲み過ぎによる弊害などが余計に心配される。寒冷な降雪地帯だと、どうしても閉じこもりがちとなり、運動不足やストレスなどにも繋がってくるのではなかろうか。

 

 次に、食事について考えてみよう。この項では、とにかくバランスを欠くことが不健康の一番の原因である。過食、偏食、小食、そして不規則、いずれにしても過、小、偏あるいは不のつく食べ方はどのような場合にも好ましくないようだ。  美食という言葉もあるが、この場合の美は偏に繋がることが多いようだ。

 

 今度は生活態度について点検してみよう。寝不足、寝過ぎ、運動不足、運動過多、テレビやスマホの見過ぎ、酒の飲み過ぎ、趣味にのめり込みすぎなどなど、ここでも不足と過ぎのつく行動は好ましくないようだ。もう一つは、ストレスとのつきあい方と他人との接し方である。いずれもそれを避けて通ることはできないが、方法を間違えると寿命を縮めることに直結させてしまう。

 

 最後に身体のメンテナンスである。ヒトの体も車と同じで無数の部品から成り立っており、部分的にあちこちが傷んでくる。どこかに不具合があれば、全体に影響してくる。場合によっては重大な結果に繋がることだってあり得る。もう一つ、宿命という観点から遺伝的なマイナス面も把握しておく必要がある。

 

 たとえ小さな過や偏あるいは不でも、何十年と積み重なれば必ず大きなマイナス要因として寿命を縮めることに繋がってくる。それらをしっかりと把握することが、120歳の限界へ向けての近道となるはずである。

                      (2023年5月15日 藤原吉弘)