バラとアジサイの競艶


[風を感じ、ときを想う日記](1186)5/9

バラとアジサイの競艶

 

 今月になってバラが本格的に咲きはじめた。今ごろがこの花の「季節」なのかもしれないが、秋にも多くの花を付け、さらには中間の時期にも花をさかせることがある。一体いつがこの花の本来の開花時期なのか、そのつど惑わされてしまう。それにしても、この季節のバラの花は、量も多くまた格別に美しい。

 

 蝋細工のようなつややかな花びらが、花芯に向けて何重にも取り囲み、えもいわれぬ美しい形の“花”を作り上げる。その花々が、茎にぶら下がるように群をなし、ひとかたまりの群像となって与えられた環境を彩る。垣根であったり、アーチだったり、場合によっては動物の形をした大型の彫刻として庭園を飾る。

 

 一方、アジサイも花を付け始めた。梅雨の花として親しまれているアジサイだが、その季節までまだ1ヵ月もあるというのにもう色づきはじめている。あの、七変化ともいわれる七色の小花の塊は、降り注ぐお日様の光に美しく輝いている。その一方、梅雨の花といわれるだけに雨の日にこそ本来の美しさをみせる。

 

 アジサイといえば、あじさい寺の呼称に代表されるように、鎌倉あたりの古いお寺に行けばいろいろなところで親しむことができる。近頃では、川の土手や遊歩道の脇、あるいは公園や広場の垣根代わりに植えられることも多い。

 

 アジサイの彩る川の土手道を、蛇の目傘を差してゆっくりと散策する。バラの終わった後は、こんな光景が私たちの心を潤してくれるのではなかろうか。