鯉のぼり


[風を感じ、ときを想う日記](1185)5/5

鯉のぼり

 

 皐月の空は、朝から見事に晴れ上がっていた。おまけに、それなりに風も吹いていた。知らずしらずのうちに、透き通った青空に、薫風に乗って泳ぐ鯉のぼりの姿を想像していた。そうだ、今年も白旗神社で鯉のぼりの群舞を見物させてもらおう。かくして、9時過ぎには家を出ていた。

 

 近年、町内で鯉のぼりを見かけることはほとんどなくなった。この街が拓かれて半世紀が経つので、男の子がみな大きくなったか親元を離れていったためである。子供の姿があまり見られなくなっただけではない。住人はもとより街そのものも、老いを隠しきれないところまで劣化してきているのだ。

 

 とにかく、鯉のぼりをさがしながら白旗神社へと歩みを進めた。片道1.5キロはあろうか、鯉のぼりを上げている家をとうとう一軒も見つけられないままその神社へとたどり着いた。もちろん、この片道30分近い道すがら、一人の子供とも行き交うことはなかった。

 

 現地はさすがに賑やかだった。電柱ほどもある高いポールが何本も立てられ、W状に張られたワイヤーに、鯉のぼりが等間隔に吊るされていた。鯉たちは、折からの薫風に乗って勢いよく泳いでいた。青空と神社の森の緑が、彼らをよく引き立てていた。その足下では、子供の日の記念行事の準備が進められていた。

 

 久し振りに目にする、子供を主役に立てた活気に満ちた光景だった。