ピンピンコロリを究めようー[その1]   ピンピンコロリとは

[エッセー 655] ―ピンピンコロリを究めよう―[その1]

ピンピンコロリとは

 

 先ごろ逝去されたイギリスのエリザベス女王は、御年96歳だった。ご逝去2日前まで公務をこなしておられたと聞く。まさに、天寿と天命を全うされ、“ピンピンコロリ”を身を以て実践された模範生でもあられたわけだ。

 

 私たちが生きものである限り、寿命は必ず尽きるときがくる。最後まできれいに燃え尽きるか、病によって命を縮められるか、あるいは事故によって半ば強制的に生きる権利を奪われてしまうかのいずれかである。私たちが理想とするのは最初に上げた終わり方で、それも先細りではなく限界ぎりぎりまで太い状態を維持することである。ピンピンとは太い状態を維持し続けることであり、コロリとは突然に近い状態で燃え尽きることである。

 

 マスコミに寿命の話題が取り上げられるとき、平均寿命のほかに健康寿命という言葉もよく登場する。平均寿命とは、「その年に生まれた子供が通算何年生きられるかを表わした数値」である。また健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」をいう。ちなみに、コロナ前のものだが、日本人の最新の数値は次のようになっている。

 平均寿命=男性:81.41歳、女性:87.45歳

 健康寿命=男性:72.68歳、女性:75.38歳

 差(不健康期間)男性:8.73年、女性:12.07年

 

 平均寿命から健康寿命を差し引いた期間、これを不健康期間と呼ぶには少々違和感があるが、その健康でない期間が10年前後もあること自体大きな問題である。このテーマであるピンピンコロリの究極の目標は、その10年前後の不健康寿命を大幅に縮めて、価値ある健康寿命へと転換させようというものである。さらには、その余勢を嘗て平均寿命をももう一段伸ばそうというものである。

 

 実は、寝たきり期間ともいえるこの不健康期間は、人間以外の動物には存在しない。例えば、ゾウの群れが餌と水場を求めて旅をしていたとする。あるとき、そのうちの一頭が動けなくなってしまった。仲間のゾウは心配そうに見つめているが、しばらくすると倒れたゾウをその場に置いて旅を続ける。残されたゾウは、やがてその場で息を引き取る。野生のゾウには、“姥捨て山”はあっても、 “寝たきり期間”やそのための“療養機関”は存在しないのだ。

 

 近頃、長生きしようとするその先に、大きな壁が立ちはだかっているかのような主旨の書籍がたくさん出版されている。しかし、本当にそんな壁があるのだろうか。できれば、ぎりぎりまで元気に活躍し、召されるときはあっけなく天に昇っていく、そんな理想を追求してみたいと思っている。実際にその年齢に達した自分自身の体験に問い、老いた頭で最良の方策を考えてみることにした。

                           (2023年4月15日)