女人高野・室生寺

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f:id:yf-fujiwara:20211210171733j:plain[エッセイ 616]

女人高野・室生寺

 

 ここ室生寺は、奈良県の東の端、三重県と境を接する宇陀市の山の中にある。真言宗室生寺派大本山とされている。真言宗といえば、弘法大師空海が開いた高野山真言宗の総本山とされる金剛峯寺が頭に浮かぶ。その金剛峯寺は、明治39年までの長い間女人禁制であった。しかし、こちらの室生寺は、開山以来女性を温かく迎え入れてきたことからいまも女人高野と呼ばれている。

 

 実は、ここ室生寺には、12年前の秋にもツアーで訪れたことがある。やはり京都方面から奈良県内に入り、談山神社長谷寺と廻わって最後にここにやってきた。あいにくの雨で、せっかくの紅葉も十分には楽しむことができなかった。とくに、奥の院までの720段の石段は滑りやすくて大変な思いをした。それにひきかえ今回は、晴れていて温かく、歩きまわるにも快適な陽気だった。

 

 この室生寺の創建は西暦680年と伝えられている。なんと、816年創建の高野山より136年も前ということになる。宗派のことはよくわからないが、弘法大師の開いた真言宗の総本山より1世紀以上も古いということになる。

 

 この室生寺は国宝や重要文化財の宝庫である。国宝とされているのは、本堂、金堂、釈迦如来立像、そして1200年前に建てられたという五重塔である。この五重塔の高さは16.1メートルで、国内で一番小さいものとして知られている。ちなみに、日本一高いのは、54.8メートルの京都の東寺、そして一番古いのは1300年の歴史を持つ奈良の法隆寺五重塔だといわれている。

 

 重要文化財とされているのは、建物では弥勒堂と奥之院の御影堂の二つがある。そして仏像では、本堂に鎮座する本尊・如意輪観音菩薩のほか、金堂に鎮座する薬師如来立像、文殊菩薩立像、十二神将立像のなどがある。山の斜面に繁る森の中にそれらが点在している。拝観して廻っているうちに心も一段と落ち着き、瞑想の世界へと引き込まれていくようにさえ感じられた。

 

 ふと時計を見ると、集合時間までまだ1時間以上残っていた。奥の院まで行ってみる?しかし、12年前とは違って決して若くはない。ヨシッ、行けるところまでいって、だめなら途中で引き返えそう。後ろから来る若い人たちが次々と追い越していく。それでも、私たちの足も黙々と上に向かって動いていく。気がついたら奥の院までたどり着いていた。

 

 考えてみると、この日の朝食はホテルのバイキングだった。普段口にできないような珍しい料理もたくさんあった。あれもこれもと皿に取っているうちに、食べきれないほどの量になってしまった。それでも、それらを頑張って平らげてしまった。あのエネルギーが、老体を奥の院まで押し上げてくれたのかもしれない。コロナにもめげず、満足感と達成感に満ちた旅をすることができた。

                         (2021年12月10日 藤原吉弘)