真夏の長雨

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[エッセイ 470]
真夏の長雨

 8月に入って3週間、カラスの鳴かない日はあっても雨の降らない日は一日もなかった。今年はカラ梅雨で水不足が心配されていた。しかし、本当の夏になってからは、一転して水余り現象が続いている。かくして、水は余るどころか、史上まれに見る大きな災害を各地にもたらした。

 おかげで、コインランドリーの店先は連日利用者の車で混雑が続いている。スーパーでは野菜の高値が続き、さらなる値上がりが心配されている。雨続きの夏は、日照不足と低温による悪影響を多方面に及ぼしてきた。最も心配されるのは、主食の米が冷害による凶作に陥ることだ。

 冷害といえば、私が仙台に転勤になった年も、そのきびしい洗礼を受けた。いまから41年前、1976年のことである。オホーツク海高気圧が発達し、東北から関東の太平洋側に“やませ”と呼ばれる冷たい偏東風が吹きつけた。おかげで、その夏は梅雨型の冷湿な天候となり、そのまま9月半ばまで続いた。

 この年の8月の平均気温は、青森市が20.3度、盛岡市は20.0度と著しく低く、8月の日照時間も平年比で盛岡市が50%以下、秋田市は約60%だった。このため、米の作況指数は、青森県91、岩手県82、宮城県90、秋田県95、山形県92、そして福島県が89、東北全体では90にとどまった。

 ところで、今年の真夏の長雨も、オホーツク海高気圧の張り出しによるものらしい。加えて、例年なら本州方面に大きく強く張り出し、北の高気圧の頭を押さえつけてくれるはずの太平洋高気圧にいまひとつ元気がみられない。両高気圧の勢力バランスが崩れたままになっていることが、不順な天候を長引かせる大きな要因になっているようだ。

 ここまで長雨が続くと、それを嫌うどころか逆に記録の更新さえ期待するようになるから、人間の心理とは不可思議なものである。その連続記録も21日間で途絶えた。長い長い雨のトンネルの、その先に突然出口が見えてきた。長期休暇を取っていた夏が、やっと戻ってきてくれたのである。

 しかし、物事は期待どおりには運ばない。トンネルの先に待っていたのは予期せぬ猛暑だった。なんでも、大陸方面に抜けていった台風13号から吹き出す上昇気流が、太平洋高気圧を必要以上に刺激したためのようだ。おかげで、関東はもちろん、全国的にも広い範囲で35度を超す猛暑に襲われた。

 今日は、長雨に足止めされていたグラウンド・ゴルフに久しぶりに出かけた。9日以来の猛暑にもめげず、たっぷりとうれしい汗を流した。この暑さで、遅れていた農作物の作柄も急速に回復してくるだろう。今年の秋も、あの美味しい新米がたくさん食べられることを期待したい。
(2017年8月23日)