ラテン音楽

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[エッセイ 445]
ラテン音楽

 キューバアメリカとの国交を回復し、国際社会へと再びデビューしようとしている。一方、ブラジルには、リオ・オリンピックを直前に控え、世界中から注目が集まっている。そんなことから、これから先世界各地でちょっとした中南米ブームが起こるのではなかろうか。

 そうした雰囲気の中で、ラテン音楽のコンサートに出かける機会を得た。客席数1380席といわれる藤沢市民会館の大ホールは、観客であらかた埋まっていた。しかし、その大半は中高年で占められていた。いまは下火になったが、私たちの若いころはジャズやラテン音楽などが身の回りにあふれていた。観客に中高年の比率が高いのも、当然の成り行きではなかろうか。

 いよいよ南佳孝さんとオルケスタ・デル・ソルとのジョイントコンサートの幕開けである。途中からゲストの麻倉末希さんも登場するはずである。パーカッションとドラムがにぎやかにリズムを奏でる。この楽団は、日本におけるサルサの草分けだそうだが、なるほど自然に体を動かしたくなるような軽快なリズムを刻んでいる。若いころの懐かしいメロディもたくさん登場してくる。

 ふと気がつくと、前方両サイドの通路では若者たちが身体をくねらせていた。なあんだ、若い人も結構来ているではないか。プログラムが進むにつれ、中高年も加わって通路はいっぱいとなった。この音楽、首から上よりむしろ身体全体で表現するものらしい。プログラムも後半になると、全員が立って手拍子を合わせ、身体をくねらせる場面まで現れてきた。

 私たちの若いころは、流行歌に加え、ラテン音楽が日本全体に蔓延していた。とくに、マンボは一世を風靡した。私は、友人とともにアルゼンチンタンゴに夢中になった。タンゴは、コンチネンタルタンゴもそれなりに流行っていたが、その歯切れの良さから、前者の方により多くのファンがいた。菅原洋一さんが藤沢嵐子さんの前座を務めているころ、私も彼の大ファンになった。

 ラテン音楽は、カリブ海を含む中南米におけるスペインとポルトガルの植民地を中心に生まれ育ったものだそうだ。インディオなどの先住民の音楽とラテン系ヨーロッパの音楽、それにアフリカの音楽が融合して出来上がったのだという。キューバのチャチャチャ、ルンバ、それにマンボ、ブラジルのサルサやボサノバ、そしてアルゼンチンのタンゴなどがそれに該当する。

 パーカッションなどの打楽器が重要な役割を担い、軽やかでにぎやかなリズムが聞く人の血を沸き立たせる。メロディももちろん重要だが、それ以上にリズムが大きな役割を担っているようだ。キューバの再登場とリオ・オリンピックを機に、日本でも再びラテン音楽が脚光を浴びるのではなかろうか。
(2016年7月26日)