俄かブランデー党

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[エッセイ 425]
俄かブランデー党

 NHKの朝ドラ「マッサン」に刺激されて、俄かウイスキー党に転向して以来10カ月になる。家内に、粗大ごみ置き場と揶揄されていた食器戸棚も、努力の甲斐あってその空間はずいぶん広くなってきた。まだ4本ほど残ってはいるが、これくらいはなにかの時のためにとっておきたい。そんなことから、この辺で一息入れることにし、次はブランデーに手をつけることにした。

 かくして、今度は俄かブランデー党に転向することになった。ただ、本当のところ、納得のいく飲み方は知らない。もちろん、ある程度の予備知識は持ち合わせており、何度も飲んだことはある。食器戸棚にはブランデーグラスも用意されている。しかし、どんなスタイルが自分に合っているのか、心から楽しむにはどんな飲み方がいいのか、全くといていいほど私には見えていない。

 とにかく、1本封を切ってみることにした。ところが、コルクが劣化していて、ひねったら栓が真中から千切れてしまった。他のビンを先に空にして、そちらに移しかえることにしようと思ってもう1本開けてみた。しかし、そのビンもコルクがもろくなっていて同じ結果になってしまった。仕方ないので、ねじまわし式の金属の蓋のついたウイスキーの空ビンを利用することにした。

 やはりかおりは抜群である。長い間ビンのまま放置しておいたが、品質には全く問題がないようだ。ただ、コルク栓のため少しずつ抜けていったのだろう、量は5%方減っていた。お酒にはめっぽう弱い家内にかおりをかがせてみたら、返事は「梅酒みたい」とそっけなかった。そう言われてみるとそのように思えなくもない。ブランデー本来のかおりが少しは劣化しているのかもしれない。

 さてどうやって飲むか。ブランデーグラスに少し入れ、手のひらの上で回しながら体温でゆっくりと温める。かおりを楽しみながら少しずつ口に含む。そんな風にやろうとした。しかし、ウォーキングでたっぷりと汗をかき、のどはカラカラに乾いていた。結局、水割りにしてグィッといってしまった。映画で見る、あの優雅な雰囲気とは全く違う世界の出来事になってしまった。

 家内の指摘する粗大ごみは、○×ならぬXOとかかれたものや、ビンの腹に金色のへそのついたものが大半である。我が家に置くより、ネットオークションに出したほうが世のためになるかもしれない。買いたたかれても少しでも回収できれば、ギンギンに冷えたビール代くらいにはなるはずである。

 典雅なかおりと豪奢でまろやかな味わいを鼻と舌でかみしめるオーソドックスな飲み方か、オンザロックでハードにいくか、はたまた水やソーダあるいはお湯で割ってソフトに味わうか。転向したばかりの俄かブランデー党には、しばらくの間不本意な試行錯誤が課せられることになりそうだ。
(2015年8月2日)