日本三大盆踊り in 藤沢

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[エッセイ 424]
日本三大盆踊り in 藤沢

 「盆踊りのふるさと」を自認する藤沢が、「藤沢宿・遊行の盆」という催事に、全国の有名盆踊りグループを招いた。盆踊りは、時宗の開祖である一遍上人が、鎌倉時代に広めた“踊り念仏”に由来するといわれる。その時宗の総本山が、藤沢市にある清淨光寺である。通常、遊行寺と呼ばれている。

 藤沢が、特別盆踊りが盛んというわけではない。しかし、これらの状況証拠を積み重ねてみると、“盆踊りのふるさと”といっても満更当っていなくもない。そんなことから、藤沢商工会議所を中心に10年前から始めたのがこのイベントである。藤沢の夏は、江の島の海ばかりではないといいたいのかもしれない。

 その二日目に当たる25日に、4つの盆踊りグループが登場した。日本三大盆踊りといわれる西馬音内(にしもない)盆踊り、郡上八幡盆踊り、阿波踊りの3グループに、風の盆で有名な越中おわらが加わった。ただ、阿波踊りは、本家徳島からではなく高円寺の「連」が招かれた。

 最初に登場したのが、秋田県の羽後町西馬音内地区からはせ参じてくれた西馬音内盆踊りである。国の重要無形文化財でもあるそうだが、百人近い大人数で、踊りはもちろん衣装もお囃しも圧巻であった。被り物は、黒いベールと編み笠の二種類があり、妖しさと優雅さを織り交ぜて見物人たちを魅了した。

 次に現れたのは、東京の高円寺からやってきた「朱雀連」というグループだった。高円寺のそれは、町おこしの一環として昭和32年に始まり、今年で59年目を迎えるというから本場に迫る伝統を誇っている。躍動感あふれる華やかなパフォーマンスが見る人を楽しませてくれた。

 3番目は、富山県八尾の越中おわらだった。二百十日の風を静めよういう“静”の踊りは、他のグループとはきわめて対照的だった。胡弓の哀調を帯びた音色が、幻想的な雰囲気を醸し出した。ただ、前の2つのグループが賑やかだっただけに、その余韻と会場の喧騒に埋没してしまった感は否めない。

 最後に登場したのが郡上八幡盆踊りである。岐阜県の山あいの町郡上八幡で、夏の間32日間も繰り広げられ、内お盆の3日間は徹夜で踊るというとてつもないスケールの盆踊りである。お囃しと踊りはどこにでもありそうなものだ。途中から見物人も加わってフィナーレにふさわしい賑やかさであった。

 こうして、有名な4つの盆踊りを居ながらにして楽しめた。ただ、いま一つなにかが欠けているように思えて仕方なかった。阿波踊りの徳島や高円寺はともかく、他の3つの盆踊りはいずれも山あいの、どちらかというと辺ぴな土地で育った地方色豊かな独特の文化である。やはり、伝統文化は、それが育まれた土地に出向き、そこに住む人たちと一緒に味わうべきなのかもしれない。
(2015年7月27日)