イチゴ

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[エッセイ 420]
イチゴ

 いま、鉢植えのイチゴが小さな実をたくさんつけている。もとは、近くの園芸店で苗を1株もらってきたものだった。それを花と一緒に植えておいたら、株が少しずつ増えていった。それが急に大きくなり、たくさんの実をつけるようになった。今朝も8粒ほどを収穫し、ヨーグルトに混ぜて賞味した。

 こう書くと、果物店で売っている“とちおとめ”のような立派なものを連想するかもしれないが、わが家のそれはせいぜい小指の先ほどのものでしかない。それでも、その実は日ごと大きくなり、色もどんどん赤味を増してくる。毎日、その変化を眺めるのが楽しみである。

 イチゴは石器時代の昔から食べられていたそうだ。もちろん、野イチゴのような貧相なものだったにちがいない。いま食べられているイチゴの原形は、オランダイチゴといわれるものである。18世紀に、オランダの農園でアメリカのバージニアイチゴとチリのチリイチゴが交雑して生まれたものだ。

 日本には、江戸時代の終わりごろそのオランダから持ちこまれた。しかし、このときはうまく定着しなかった。1872年に、今度はフランスから持ち込まれ、それがうまく定着して本格的に栽培されるようになったという。以降、年々品種改良が進み、いまでは150種類以上が品質の良さを競っている。

 イチゴの果実と思われている部分は果実ではなく、花托あるいは花床といわれる雌しべの布団に相当する部分である。実際の果実は、種に見える表面の黒い粒々で、通常痩果と呼ばれている部分だそうだ。白い花が咲き受精が終わると、花托の肥大が始まり果実のように成長する。一部受精していない雌しべがあると、その部分の肥大が弱くなり全体がいびつになってしまうという。

 日本国内の生産量は年約20万トン、県別シェアは栃木15.9%、福岡11.0%、熊本7.4%の順になっている。世界全体の生産量は年約450万トン、国別シェアはアメリカ30%、メキシコ8%、トルコ8%弱などとなっている。日本の外国との取引関係は、輸出入ともに極めて少ないようだ。

 イチゴは、生食はもちろんジュースやジャム、あるいはケーキなどの飾りとして広く日本人に愛されている。イチゴの糖度は、ヘタの部分が低く先へ行くほど高くなるそうだ。そんなことから、生食する場合はヘタから食べていけば最後まで美味しくいただけるという。イチゴにはビタミンC、葉酸、食物繊維、色素成分などが多く含まれており、風邪予防、美肌効果、貧血予防、血糖値やコレステロールの抑制、がんの予防などが期待できるという。

 イチゴは多年草だが連作を嫌い、株も新しいものがいいという。わが家の鉢植えも、収穫が終わり次第もっと大きな鉢に植え替えてやるつもりである。
(2015年5月31日)