投げ込みチラシ

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[エッセイ 360]
投げ込みチラシ

 ある大手不動産会社の広告チラシが、わが家の郵便受けに毎日のように投げ込まれる。この地域で売りたい物件を探しています。この街で、物件を買いたいお客様に朗報です。内容は不動産の仲介が大半だが、ときにはそのチラシを投入して歩くアルバイトを募集しているというものもある。

 毎日のように、ときには一日に2回も3回も投げ込まれることがある。そのままゴミ箱に投げ捨ててはいるが、大事な手紙が挟まっていることもあるのでうっかりはできない。雨の日など、びしょびしょになった紙切れが、ぬれ落ち葉のごとく郵便受けに張り付いている。ときには、その水滴で他の手紙まで濡らしてしまうこともある。もういい加減にしてほしい。

 最近、「チラシお断り」と郵便受けに張り紙をしているお宅をみかける。これで投入を遠慮してくれればありがたいが、家の正面にそんな貼り紙をすること自体、気持ちの上でかなりの抵抗がある。なにかいい方法はないものだろうか。初めて、そのチラシを丹念にチェックしてみた。電話のほかにメールアドレスも記載されていた。そうだ、メールでお願いしてみよう。

 「お願いがあります。毎日毎日、わが家の神聖な郵便受けに、御社のチラシと称する紙くずが投げ込まれて大変迷惑しています。わが家ではこのような紙くずにはまったく関心がありませんので、以降一切投げ込まないようお願いします。くれぐれもよろしくお願いします。他のご担当者様にも同様よろしくお伝えくださいますようお願いいたします」。もちろん、相手先の社名と担当者名はフルネームで、当方の住所氏名も最後まできちんと記載した。

 翌日から投げ込みは止った。その後も新たな発生はない。さすが立派な会社だ!ちゃんということを聞いてくれた。そう思っていたら、5日目にまたチラシが入った。やはりその程度の会社だったか、と思いよく見ると別の営業所だった。さっそく同文のメールを送信した。チラシは再び入らなくなった。

 それからさらに3日が過ぎたとき、また見覚えのあるチラシが届いた。ムッ、としながら営業所の欄を見ると、さらに別の事業所だった。この会社は市内に3つも拠点を持ち、入り乱れて競い合っているようだ。ただこのチラシにはメールアドレスの記載がなかった。さっそく電話でそれを聞きだし同文のメールを送った。あれから一週間、いまのところ新たなチラシの投入はない。

 それにしても、投げ込みチラシがそれほどまでに効果があるのだろうか。私の現役時代は、営業は足で稼げと叩き込まれた。たしかに、砂浜でダイアモンドの粒を探すような大変困難な市場だとは思う。それでも、アルバイトに、人の嫌がるチラシを投げ込ませておいて本当に事足りるのだろうか。
(2012年11月16日)