東京スカイツリー

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[エッセイ 282]
東京スカイツリー

 建設中のいまこそ、しっかりと見ておくべきである。出来上がってしまったら、停滞するいまの日本のように、その魅力は大きくしぼんでしまうかもしれない。日本とは対照的に、新興国の活力はそこに居合わせただけで血は沸き肉は踊る。東京スカイツリーの現況こそ、新興国の熱気に例えることができよう。

 2日前の土曜日には379メートルに達していた。いまごろはニューヨークの誇る381メートルのエンパイアステートビルと肩を並べているころである。そして、来月の半ばには、9・11同時テロの舞台となったWTC・ツインタワーの417メートルの記録も抜き去ることになるはずである。

 その東京スカイツリーは、続々と建設される超高層ビルとの背伸び競争を勝ち抜くために計画されたものである。折からの地デジ放送に対応するためと見られがちだが、あくまでも電波障害を解消するために建設されるものである。完成すれば、ドバイに建つ828メートルのブルジュ・ハリファに次いで世界で2番目に高い建造物となる。

 このタワーは、東武鉄道が専門の子会社を作り、そこが事業主体となって建設・運営することになっている。建設地には、墨田区東武伊勢崎線業平橋駅わきにある東武鉄道の遊休地が用意された。総事業費は650億円、内タワーの建設費は400億円と見積もられ、大林組が元請けとなっている。2011年末の完成の暁には、在京の全テレビ局が利用する予定だそうだ。

 鉄骨造り、高さ634メートルのタワーは、土台部分は一辺68メートルの正三角形、それが上にいくほど円に近くなり地上320メートルあたりで完全な円筒形となる。地上350メートルと450メートルに展望台が設けられる。塔の中心部には直径8メートル、高さ375メートルの心柱が通され、経験したことのないような強い地震にも十分耐えられる構造になっているという。

 ただ、その構造がいくら立派でも、よって立つ地盤に信頼が持てないとしら、地震国だけに一抹の不安が残ってしまう。このあたりは隅田川に近く、すぐ脇には北十間川という小川も流れており、地盤はお世辞にも強固とはいえないはずである。建設技術は格段に進歩しており、万が一にもピサの斜塔のようなことにはならないだろうが、念には念を入れてもらいたいものである。

 いま、この地域は、タワーの建設を契機に大きな変貌を遂げようとしている。開発プロジェクトも目白押しだという。さらには、ようやく活況を取り戻しつつある対岸の浅草地区も、このチャンスを生かしてもう一皮むけてくれることであろう。青空に伸びるスカイツリー隅田川の水面に映える。そんな風景を思い描いて、はやくも胸の高鳴りをおぼえはじめた。
(2010年5月24日)

写真 上:北十間川を挟んで真下から見たスカイツリー
   下:浅草・吾妻橋たもとから隅田川越しに望むスカイツリー