液晶テレビ

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[エッセイ 277]
液晶テレビ

 三連休の最終日は、前日までの嵐がうそのような穏やかな日和となった。朝からぼんやりとテレビを見ていたら、突然あることを思い出した。家電製品のエコポイント制が、部分的にではあるが3月いっぱいで終了するという話である。家内を誘って、とにかく家電量販店に出かけてみることにした。

 テレビ放送は、来年7月25日以降地上デジタル放送に一本化される。そのため、それまでには新しい液晶テレビを用意しておかなければならない。しかし、今使っているものは15年くらいにはなるが、故障もなく映りもいいので、新製品や価額の動向などを見極めてから買い替えても遅くはないと考えていた。

 テレビ売り場はさすがに混雑していた。魅力的な大型液晶テレビが所狭ましと並べられ、値段も随分安くなったように見受けられる。赤札のそばには30,000円キャッシュバックという表示まである。エコポイントも考慮すると今が買い時なのかもしれない。

 モデルチェンジを控えて売り急いでいる商品も多く、これらの値付けはさらにお買い得感をあおる。赤札に書かれた値段から、エコポイントの12,000Pとリサイクルポイントの3,000Pを引き、さらに30,000円のキャッシュバックを考えると、いま買わなければ買わない方がバカだとさえ思えてくる。

 結局、32型で録画機能が内蔵された商品を契約した。店員には37型を勧められたが、ある知人の家に伺った時のことを思い出し踏みとどまった。そのお宅の居間には大きな液晶テレビがドーンと置かれており、室内のバランスが崩れてそこだけが異様に浮き上がって見えたのだ。

 値段の方も異様に安いと思ったが、例の30,000円のキャッシュバックは、ブロードバンドを新規に契約することが条件と分かりすっかり目が覚めた。それでも、思っていたよりずっと手頃であり、どうせ1年以内には買わなければならないのだからとそのまま話を進めることにした。

 それにしても、エコポイント制とはさすが役所の考えそうなことである。その予算を直接価額に反映させるようにすれば、もっと国民は喜び効果も大きいはずなのに、わざわざ多くの手間と時間と費用をつぎ込んで推し進めようとする。下々から欲しいものを申請させ、お上からおもむろにそれを下げ渡す。政府の度量の大きさと、ありがたさを実感させようという魂胆のようだ。

 翌日、昼前には現物が届いた。部屋の広さや雰囲気、あるいは家具類との調和から、やはり注文したとおりの大きさでよかった。わが家は地域の共同アンテナに加入しているので、新たな工事は必要なく、すぐにも地デジの多様な機能と鮮明な画像を楽しむことができるようになった。
(2010年3月23日)