胃のバリウム検査

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[エッセイ 263](新作)
胃のバリウム検査

 「忘れないでよく来てくれましたね」「昨日、確認の電話くらいいただけるかと期待していましたが・・。それにしても間が空きすぎですよ」。予約を申し出たのが9月初め、そのとき取れたのが3カ月後の12月上旬であった。

 9月初め、市が行う高齢者向けの健康診断を受けた。この健康診断には胃がんの検査も含まれていたが、バリウムによるレントゲン検査は混みあっているので後にしてほしいと示されたのがこの日程であった。

 こうして、胃がんのレントゲン検査が始まった。看護士が、胃の動きを抑えるためのブスコバンという筋肉注射をしてくれた。注射が効き始めるころを見計らって医師によるレントゲン撮影が始まった。撮影前に、少量の顆粒とコップ一杯のバリウムが手渡された。顆粒は炭酸ガスを発生させ胃を膨らませるためのもの、バリウムは胃に陰影をつけるための造影剤である。

 全部で10カットくらい撮っただろうか、立ったり寝たり横になったりで、撮影はあっという間に終わった。体の向きを変えるとき、腰に痛みを感じることはあったが大した苦痛もなく比較的楽な検査だった。15分くらい待てば現像ができるとわれ、それを待って医師の所見を聞くことにした。

 実物大のネガ写真が並べられ、一枚ずつ解説された。とくに疑わしいところはないという。実は、胃の検査を受けるのは10年ぶりである。もし、その間になにかあったら、とっくに手遅れになっていたはずである。正直いって、ほっとしている。しかし、市の嘱託医がもう一度綿密にチェックするので、その結果次第では胃カメラによる精密検査もありうると念を押された。

 胃の検査は、現役のころは会社で否応なく受けさせられていたが、フリーの身になってからは自身の判断にまかされていた。市からは毎年案内が来るので、気の向いたとき近所のなじみのお医者さんで受けていた。ただ、その医院には、市の指定する検査装置はなかったので結局受けずじまいになっていた。
 
 ところで、あのバリウムという金属の入った飲み物は一体なんなのだろう。もちろん、レントゲン検査ではX線を通さない造影剤が必要だということは解っている。体に害はないと聞かされてはいたが、一部にはアレルギー反応の出る人もいるという。また、腸内で固まって苦しむ人もいるそうだ。X線だって、被ばく量が増えれば深刻な問題も出てくるはずである。

 しかし、なにごともプラスだけということはありえない。プラスとマイナスを天秤にかけ、その傾き加減でどうするかを判断すべきであろう。今回の検査でも、いくばくかの副作用は必ず残されているはずである。しかし、安堵しただけでも心身に大きなプラスとなったはずである。
(2009年12月15日)