槌音

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[風を感じ、ときを想う日記](284)7/21
槌音

 昨年秋、近所の宅地造成工事についてエッセイに書いたことがある。ある通信会社の社宅のあったところで、鉄筋コンクリート造りの中層住宅が4棟建っていた。土壌汚染が見つかって土を入れ替えたり、擁護壁に使った生コンの偽装が発覚して打ち直したりとさんざんてこずった現場である。

 今年の春、そこが63区画の戸建住宅用地として生まれ変わった。いま、その半分くらいの区画に、木造二階建ての建売住宅が建設されている。この秋にも売り出すという予告広告が新聞に折り込まれていた。

 30戸ちかい住宅の建設が一斉に始まったので、その槌音はまさに木製打楽器の大合奏である。地形の関係で相当離れているようにみえるが、地図で直線距離を測ってみるとわが家とは百数十メートルしか離れていない。音は当然のように直進してくる。いまのご時世では景気のいい音と評価すべきかもしれないが、騒音であることに変わりはない。

 それでも、日に日にあたりの様子が変わっていくのは頼もしい。ただせっかく完成しても、順調に売れて活気のある街が誕生する保証はどこにもない。この現場からさらに100メートルばかり離れたところには、ある電鉄会社が15階建ての大型分譲マンションを建設中である。完成間近であるが、売れ行きははかばかしくないようで、つい最近大幅な値下げをしたばかりである。

 槌音の騒音が、子供たちのにぎやかな歓声に変わることを期待したい。