耐震診断

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[エッセイ 271](新作)
耐震診断

 市役所から、木造住宅の耐震診断についての“お知らせ”がまわってきた。耐震診断については、費用3万円のうちの2万5千円を補助するという。耐震改修工事をする場合は、費用の2分の1、60万円を上限に補助するという。対象となる住宅は、「1981年5月31日以前に建築された二階建て以下の木造在来軸組工法の住宅で、所有者が住んでいること」となっている。

 このような呼びかけは過去に何度かあったが、わが家はその基準日あたりに家を建て始めたので大丈夫だろうと思いそれ以上の行動は起さなかった。ただ多少の心配はあったので、念のために施工してもらった工務店に聞いてみた。しかし、そのおやじも、詳しい資料が残っていないので、市役所に相談されてみてはどうですかというだけであった。

 ところで、市役所が呼びかけている耐震診断の基準であるが、これは1981年6月1日に改定された建築基準法の耐震基準である。その大まかな概念は、「震度5強程度の中規模地震では軽微な損傷、震度6強から7程度の大規模地震でも倒壊は免れる」強度ということになっている。

 その耐震基準の根拠となる建築基準法は、1948年に発生した福井地震の教訓をもとに、その2年後の1950年に初めて制定された。以降、大地震のたびに主に耐震基準が見直されてきた。1971年には、その3年前の1968年に発生した十勝沖地震が、1981年には、やはりその3年前の1978年に起こった宮城県沖地震が見直しのきっかけとなっている。

 1981年に改定された耐震基準は、死者28名、全半壊家屋7,400戸に及んだ宮城県沖地震の分析から生まれたもので、いまも立派にその使命を果たしている。その新耐震基準は、1995年に発生した阪神淡路大震災によってはからずもその有効性が確認された。この大震災では、耐震基準改定時以前の建物の約80%が何らかの被害を受けたのに対し、これ以降の建物は約80%が軽微もしくは被害なしにとどまり大破や倒壊したものはわずか1%だったという。

 話はわが家の建物に戻るが、やはり“大丈夫だろう”だけではすっきりしない。そこで、引き出しを全部ひっくり返して調べてみたら、当時の建築確認書が出てきた。よく見ると、その申請書が市役所に「受理」されたのが1981年5月27日、「確認」をもらったのが法律施行日翌日の6月2日となっている。間違いなく、新耐震基準にのっとって“確認”されたものであった。

 しかし、これで地震対策は万全というわけではもちろんない。大型家具こそ鴨居に固定したが、食器戸棚や大型家電などは固定する相手が見つからずただ置いてあるだけである。残された課題こそ山積みのままといえよう。
(2010年2月18日)