ニューヨーク・普通の生活の日記⑧(5/31)「ミュージカル」

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[エッセイ 128](新作)
ニューヨーク・普通の生活の日記⑧「ミュージカル」

 水曜日の昼下がり、ここブロード・ウェイ(Broadway)にはあちこちに長蛇の列ができていた。その多くが中年以上のおばさんたちである。なかには、観光バスでやってくる高校生の集団もいた。
 
 私たちは、数日前から水曜日にはミュージカルを観ると決めていた。ニューヨークの劇場は、通常は午後8時からの1日1回の公演である。ただし、水曜日と土曜日にかぎっては、大半の劇場が午後2時からの公演を追加している。午後の8時からでは、帰宅に多少の不安が残るので、水曜日の昼間を選んだわけである。
 
 日本語の情報誌を開いてみると、ブロード・ウェイにはミュージカルの劇場が24もある。「ライオン・キング(The Lion King)」をはじめ、おなじみの出し物も勢揃いしている。私たちは、その中から「プロデューサーズ(The Producers)」というトミー賞受賞の作品を選んだ。筋書きが簡単で、セリフが少なく歌と踊りの多い華やかなものを好んだわけである。
 
 2人のプロデューサーが、一夜で打ち切り間違いなしの最悪のミュージカルを上演し、出資者からお金をだまし取ろうと企む。しかし、そのミュージカルが大ヒットしてしまったから大変・・。情報誌に書かれたこんな筋書きを思い浮かべながら、本場の歌と踊りを存分に楽しむことができた。
 
 私は、この狭い地域に、これだけの劇場と出し物がひしめいているのをみて、“粗製濫造”あるいは“閑古鳥-経営難”といった言葉をすぐにも思い浮かべた。しかし、私たちの入った小屋(St. James Theatre)は立派な大劇場であり、客席は満員に近かった。通りの真向かいにあり、19年連続・最多公演記録を更新中の「オペラ座の怪人The Phantom of the Opera)」がかかっているマジェスティック劇場(Majestic Theatre)には、今日も長蛇の列ができていた。

 せっかくマンハッタンに出かけるなら、野外のマーケットも見てみたい。グランド・セントラル駅からまっすぐ南下し、ブロードウェイと交差するところにユニオン・スクエア(Union Square)という広場がある。中央が公園で、周囲がグリーン・マーケット(Green Market)という露店市場になっている。
 
 テント張りの店がかれこれ4、50はあるだろうか。半分以上が青果や生花の店、あとは肉や魚あるいはパンなどを商っていた。数店であるが、自身の作品と思われる絵画などを並べているコーナーもあった。品質と鮮度がすべての世界である。そのバイタリティは、アジアのそれに優るとも劣らなかった。

 今日は、ブロードウェイという思わぬ場所で、ニューヨークの、そしてアメリカという国の本当の豊かさと底力を見せつけられたおもいである。

[写真は、上がユニオン・スクエアの朝市の様子、
     下はプロデューサーズの宣伝看板]