ニューヨーク・普通の生活の日記]⑦(5/30)「スーパーマーケット」

イメージ 1

イメージ 2

[エッセイ 127](新作)
ニューヨーク・普通の生活の日記⑦「5/30」

 ニューヨーク市は、その中心であるマンハッタン島と、本土のブロンクス地区、東側のロングアイランド島にあるクイーンズ地区とブルックリン地区、それに南側の海上に浮ぶスタッテン島の5つの地域から構成されている。ちなみに、西側にはハドソン川が流れ、その先はニュージャージー州である。

 わがタカホは、米本土、ブロンクス地区のさらに北側に位置する。東京でいえば、立川あたりになるのではなかろうか。緑が多く、鉄道や高速道路から見えるのはほとんどが森の木々である。中流家庭が多いといわれ、現実に一戸建ては日本のそれと大差ない。しかし、そんな中流地区でありながら、緑地は住宅地の面積を大きく上回っている。

 この日は、ニューヨークに来て初めて、具体的なスケジュールのない一日となった。さっそく、高齢者にとっての「普通の生活」を満喫すべく、近所の森の公園へと出かけていった。緑の中、時間がゆっくりと流れ、澄み切った冷気が体の隅々にまでしみわたっていく。

 私にとって、散歩とともにスーパーマーケットに出かけるのもまた日常である。まして外国に行けば、その国を知る上でこれは必須課題である。お嫁さんも、今日はぜひ行きつけの店に案内したいといってくれている。

 「Stew Leonard’s」というその大型マーケットは、丘陵地の森を切り開いた自然豊な場所にあった。食品中心のこの店の品揃えは、日本のそれと大きな違いはない。ただ、当然のことながら、肉や乳製品の割合が多く魚は少品種に限られるなど、アメリカの食生活を色濃く反映している。
 
 野菜は、お世辞にも出来がいいとはいえない。キャベツなどはみるからに硬そうである。葉ものは、細かく切ってそのまま食べられるようにパックしてあるものが多い。アメリカのまな板は小さいといわれるが本当のようである。
 
 魚は、鮭やスズキのような大型の魚にしぼられ種類は少ない。それらを三枚におろし、片身の状態で並べている。貝やロブスターあるいはエビなどは意外と種類も多い。タコが生のまま売られていたのには少々びっくりした。

 販売単位はかなり多めで、パッケージもおおざっぱである。入口近くの一番目立つ場所に、日本の浴槽を二回りくらい大きくしたような8角形のダンボール箱が置かれていた。中には、何十個という西瓜が無造作に入れられている。もちろん売り物であるが、こんな具合にすべてがおおらかといっていい。
 
 マンハッタンは摩天楼のジャングル。郊外の住宅街は緑の森。スーパーマーケットでは、あまり必要でない手間は極限まで省かれる。こうした思い切ったメリハリが、アメリカ発展の要因の一つとなっていることは間違いあるまい。

[写真、上はタカホ駅、下はスーパーマーケット「Stew Leonard's」]