衣類乾燥機の買い換え

[エッセイ 678]

衣類乾燥機の買い換え

 

 春の気配が漂い始めると、晴れと雨が交互にやってきて、おまけに不順な天候が続くことも多くなる。そんな雨続きの日には、どうしても衣類乾燥機のお世話にならざるをえない。その、平素から頼りにしているわが家の乾燥機が、このところ体調不良を訴えるようになってきた。人間なら後期高齢者と呼ばれてもおかしくないベテランなので、当然引退も考えてやらなければならない。

 

 そんな思いを胸に、先日電気器具点を訪ねてみた。1軒目、なんと衣類乾燥機は置いていなかった。仕方なく別の店に廻った。2軒目では、あるにはあったが展示品は2台が並べられているだけだった。今までわが家で使っていたものと同じタイプのP社製品が台の上に、そしてあと1台はブランド名も定かでない小型のものが床に無造作に置かれていた。

 

 どうやら、時の流れは洗濯機と衣類乾燥機が一体となったものが主流となっているようだ。しかし、洗濯機は買い換えたばかりで、当面新しいものは必要としない。さらには、婦人物は乾燥機に不向きなものも多い。家族構成が縮小してしまった現状では、乾燥機は洗濯機とは別々に使える小型のものが使い勝手にも優れているといえよう。よし、この小型の機種に決めよう!

 

 新規購入した小型乾燥機は配送扱いとし、今までのものとは自宅で交換することにした。古い乾燥機の処分は、専門業者に任せなければならないためだ。来訪した担当者は、古い方を台から取り外す一方、持ってきた新しい製品は床に置いたままにした。“危ないので、台には乗せず、この状態で使ってください。また、今までの台はそちらで処分してください”といって帰っていった。

 

 購入した店の係員からは、こうした説明はなにひとつ聞かされていなかった。当方は、乾燥機はすべて洗濯機の上を跨ぐ台に乗せて使うものだと思い込んでいた。これでは、元々狭かったスペースがますます窮屈になり、おまけに、乾燥機から出る湯気は狭い部屋に充満することになる。使い勝手は最悪の状況が予想された。ここまできた以上、交換や返品は難しそうだ。どうしよう!

 

 出した結論は、新規購入した乾燥機を今まで同様台の上に固定し、これまでと同じような使い方をするということだった。台の転倒防止と振動抑制、乾燥機の台への固定、こうした課題は長年積み重ねてきた経験と技術を駆使して完璧に仕上げた(つもりである)。見た目にも十分に耐えられるよう最大限の気配りもした。もちろん、これらすべて当方の責任においてである。

 

 雨の日、早速試してみた。低目の温度で稼働させると、所要時間は今までより多少長くなるようだ。しかし、時間より、衣類の品質保持と安全運転こそ優先すべき事柄である。これをモットーに、これから長くお付き合いしていきたい。

                         (2024年3月10日 藤原吉弘)