辰と龍

[エッセイ 676]

辰と龍

 

 明けて今年は“たつ年”。漢字では“辰年”と書き、シンボルとして絵で表わされるときは“竜”の姿となる。もちろん、“竜年”や“龍年”と書いてタツドシと読むこともできるが、年号として漢字で書く場合はやはり辰年が妥当なようだ。そこで、これらに関わるうろ覚えの知識を整理するため、関連する主な言葉を書棚にある「広辞林」で調べてみた。

 

 [辰]とは、①十二支の5番目の呼称。②昔の時刻の呼び名で、今の午前七時およびその後の二時間をいう。③方角の呼び名で、ほぼ東南東のことをいう。④俗に、龍のことをいう。[竜(たつ)]とは、想像上の動物。体は大蛇(だいじゃ)に似て、背には八十一のうろこが、頭には二本の角が、四足には五本の指がある。耳・面は共に長く、口辺に大きなひげがある。雲をおこし、雨を呼ぶといわれている。

 

 [竜(りゅう)]①海、池、沼などにすむという想像上の動物。巨大な爬虫類で、神秘的な威力があり、インドの伝説では仏法を守護した説話が多い。中国では麟(りん)、鳳(ほう)、亀(き)と合せて四瑞(しずい)とし、天使になぞらえる。竜王龍神などともいう。[登竜門]後漢書にある龍門は中国の黄河上流の急な瀬。コイがこれを登れば竜になるとの言い伝えで、人の栄達にたとえる。立身出世の関門。

 

 ところで、近隣の住宅地には、中央を小さな川が流れている。その下流の方は、天候しだいではあふれる危険性もあることから改修工事が行われた。幅を広げ、底も掘り下げたがその接続部分には段差ができた。その小さな滝を、私は密かに登竜門と呼んでいる。その小滝の下流にはコイが沢山いるが、その段差を上った鯉は未だかつて見かけたことがないためだ。

 

 先日は、チコチャンの番組でも面白い話が出た。十二支のうち実在しない生きものは竜だけだと。“ナンデ!?”。「空に登っていく生きものを仲間に入れたかったから・・」「大昔のことだから、実在するかしないか、だれもよく知らなかったから・・」。そういえば、日本の古い絵画には一風変わった象さんが描かれていたり、竜がワニやクジラに置き換わる国もあったりして・・。

 

 昨年は、世界中でずいぶん悲惨なことが起った。二つの地域では戦争まで勃発し今も続いている。新しい年・辰年は一体どんな年になるのだろう。できることなら、夢、希望、幸運、繁栄、そしてそれを裏付ける平和といった言葉が当てはまる年であってほしいものだ。そしてそれを実現するための、創造性、自信、情熱、そして勇気といった言葉が通用する年になってもらいたいものだ。

 

 私も、元旦の初詣でそんなことを神さまにお願いしてきた。

                       (2024年1月2日 藤原吉弘)

注)ダイヤモンド富士の写真は、テレビ朝日の画面から拝借した