子年

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[エッセイ 541]
子年

 

 明けて今年は子年、十二支の先頭に戻っての再スタートとなる。この子年というのは、一部の例外を除いてほとんどが閏年になる。もちろん今年も閏年だが、その例外の平年扱いとは、前回が西暦1900年、次は2200年である。この十二支の由来のうち、子年が最初に置かれた理由について少し触れてみたい。


 むかし、十二支の動物は、元旦の朝、神様の家の前に着いた順番に決めるというお触れが出された。ウシは鈍いので真っ先に出かけ、予定どおり一番に着いた。ところが、夜明けとともに神様が門を開けようとした瞬間、ウシの角の後ろに隠れていたネズミが飛び出して一着を横取りしてしまった。


 ネコは、集合日を忘れたのでネズミに聞いたところ、うそを教えられて参加できなかった。ネコは、すぐ神さまに不服を申し立てたが、神さまは「顔を洗って出直してこい」といってネコを追い返したそうだ。以来、ネコは顔を洗っては反省を繰り返し、ネズミさえ見れば追いかけ回すようになったという。


 ところで、ネズミとは一体どんな生き物なのだろう。ほとんどは丸い耳、尖った鼻先、丸い尻尾をもち、種の見分けが難しい。ほとんどが夜行性である。病原体を媒介することから、衛生害獣とも呼ばれている。ネズミの門歯は一生伸び続ける。そのため、常に堅いものをかじって前歯をすり減らさなければならない。放置すると、伸びた歯が口を塞ぎ、食べ物が口に入らなくなり餓死してしまう。


 ネズミは、ねずみ算という言葉があるくらい繁殖力が旺盛である。ハツカネズミは、一度に6~8匹生み、生まれて3~4週間で子供が産めるようになることから実験動物として広く利用されている。ネズミは小さく可愛いものが多いが、ヤマアラシチンチラそしてカピバラなど比較的大型のものもその仲間である。


 ネズミは、とかくマイナスイメージが強調されがちだが、言い伝えなどでは結構大切な役割を果たしている。古事記によると、大国主命は先祖のスサノウ命から、荒野に向けて放った矢を取ってくるよう命じられる。矢を探して野に入ると、スサノウ命はそこに火を放ち、大国主命は窮地に陥る。そのとき、一匹のネズミが現われ、口のすぼんだ穴のあることを教える。


 大国主命はそこに隠れて火をやり過ごし、ネズミは探していた矢をくわえてくる。こうして、大国主命はネズミの助けによって試練を乗り越えた。その大国主命は、仏教伝来以来、呼び名のよく似た仏教の大黒天との習合が進み、一体化して大黒様となった。俵に乗った大黒様と、そばに侍るネズミの取り合わせは絵にもなる。そんなことから、ネズミは大黒様の使いといわれるようになった。


 今年は、大国主命のようにネズミの知恵と力も借りて、スマイリージージー(爺々)を目指してにこやかに過ごしていきたい。
                       (2020年1月1日 藤原吉弘)