十三夜の月

[風を感じ、ときを想う日記](1215)10/28

十三夜の月

 

 昨日、10月27日は旧暦の9月13日にあたっていた。秋の深まるこの夜の月は、「十三夜の月」と呼ばれ中秋の名月に次ぐ二番目の名月だといわれている。

 

 実際、昨夜の月はほとんど円に近く、雲一つない澄み切った夜空を背にこうこうと輝いていた。二番目に美しいといわれるだけあって、眺めがいのある魅力にあふれた姿だった。満月の二日前という未完成の美しさは、完全な円の満月以上に私たちの心の奥深くにまで入り込んできた。

 

 樋口一葉の作品に「十三夜」という題の小説がある。身分違いの結婚をして夫の冷酷な仕打ちに泣く貧乏士族の娘が主人公である。十三夜の晩に、今は車夫となっている少女時代の初恋の男に会い、悲しみを抱きながらそのまま分かれるという、無力な女性の運命を描いたものである。

 

 古くからの言い伝えでは、十五夜と十三夜のうちどちらか一方しか見ないのは縁起がわるいとされ、その見た方の月のことを「片見月」と呼ぶそうだ。一葉の小説では、十三夜の月のもとで再会はしたが、その前の中秋の名月は見逃していたのかもしれない。もし、二人とも事前に十五夜の名月を見ていたら、話はまた別の展開をみせていたかもしれない・・。

 

 今年の秋は晴天続きで、両方の名月をたっぷりと楽しむことができた。これから年末にかけて、「二夜の月」の御利益が次々と舞い降りてくるかもしれない。