シロツメクサ

[エッセイ 666]

シロツメクサ

 

 最近では、歌番組をテレビで楽しもうとしても、そのチャンスは極端に少なくなっている。まして、歌謡曲となるとなおさらである。そこで、最近発表された歌にはどんなものがあるのだろうかとネットで検索してみた。すると、「しろつめ草」という曲名が目に入ってきた。シロツメクサといえばクローバーのことだが、あんな草が演歌の題材になるのだろうかとちょっぴり不思議に思った。

 

 たしかに童謡なら、それなりの材料にはなりそうだ。子供たちみんなで四つ葉のクローバーを探したとか、あの草で花冠を作って頭に乗せて遊んだといったことである。それを演歌にするとなると、男女の生きざまをこの草に乗せてロマンチックに表現しなければならない。かなり困難な作業のようにも思える。そこで、暇に飽かせて歌詞まで検索してみた。結果はまさに推測の通りだった。

 

 そんなことから、今回はシロツメクサについて少し考えてみることにした。あの草の名前の由来だが、漢字では「白詰草」と書き、白い花を付ける詰草という意味だそうだ。江戸時代、オランダから長崎にガラス製品が送られるとき、その荷造りの詰め物としてクローバーを乾燥させたものが使われていた。ヨーロッパ原産のこの草は、こうして日本に上陸し各地に伝わっていったようだ。

 

 このシロツメクサは、マメ科一年草または多年草だそうだ。今では、北海道から九州まで広く分布しており、空き地やグラウンド、田畑のまわりなど、地面を這うように力強く広がっている。春や秋に種から発芽し急速に成長する。花は春から初夏にかけて咲かせる。冬は、地上部分は枯れることが多いが、根はしっかりと残っており春になると若葉を芽生えさせるそうだ。

 

 クローバーには地力を向上させる力があり、痩せた土地や荒れ地の緑化に用いられることが多い。果樹園の下草や法面などの保護強化にも広く用いられている。家畜の飼料にもなることから、放牧地にも植えられることも多い。クローバーの若葉は食用にもなり、調理しだいでは結構美味だそうだ。この草の白い花は蜜蜂にも好まれ、集められた蜜は最高級品に位置づけされるそうだ。

 

 聖パトリックは、クローバーの3枚の葉っぱに意味合いを持たせている。「信仰」、「希望」そして「愛情」である。もしその三つ葉が四つ葉だったら、4枚目の葉っぱは「幸福」を意味するという。四つ葉のクローバーは十字架を指すとも考えられており、聖なる草として珍重されているそうだ。

 

 シロツメクサは、踏みつけられても刈り取られてもどんどん再生してくる強い草である。単なる子供の遊び道具や、荒れ地対策用の雑草ではなさそうだ。その生命力の強さを歌謡曲の再生にも繋げられたら、New J Pops(New Japanese Popular Songs) として世界中に力強く広がっていくかもしれない。

                       (2023年9月5日 藤原吉弘)