ピンピンコロリを究めよう        [その8]まとめ・とにかく外に出てみよう!

  

[エッセイ 662] ―ピンピンコロリを究めよう―[その8]

まとめ・とにかく外に出てみよう!

 

 “鬼は外、福は内!”というフレーズがある。しかし、このピンピンコロリのテーマに関するかぎり、福は外にはあっても内にはない。歴史上、洞穴に籠もって価値あるものを会得できたのは弘法大師宮本武蔵くらいである。たいていの人の後半生は、外にこそその「福」が待っていると考えるべきである。

 

 このテーマに関する私の提案を本気に考えてくれる人がいるとしたら、たいていは中年以上の人である。その人たちに、“これからはこう生きるべきだ”などといってみてもあまり聞いてもらえそうにはない。もし本気だったとしても、手遅れで、効果はあまり期待できないだろう。それなら、とにかく外に出てみよう、外にさえ出てみれば新たな世界が開けるかもしれないと訴えたい。

 

 外に出かけるためには歩かなければならない。歩けば体に負荷がかかり、とくに足の衰退を遅らせることに繋がる。外の世界では、新しい発見や驚きが待っており、新たな疑問が脳や心を沸き立たせてくれる。そんなとき、もし知り合いに出会えたら、会話は弾み、心はどんどん豊かになってくるはずである。

 

 こう考えてくると、屋外のゲーム性のあるサークル活動やラジオ体操の会に参加できれば、想像以上に大きな効果が期待できるのではなかろうか。私の参加しているグラウンド・ゴルフにたとえれば、このような要件を相当部分かなえてくれそうだ。軽い運動とゲームの緊張感を伴い、さらにはコミュニケーション力や社会性も要求されるため、筋肉や脳細胞の再生に大きな効果が期待できる。

 

 外に出れば、食もいっそう進むようになる。肉や魚、もちろん野菜も含め好き嫌いなく美味しくいただけたとしたら、こんなうれしいことはない。三度三度、それもある程度の決まった量の食事は、衰退を加速させようとする肉体をある程度物理的に制御することができる。食べること、そして寝ること、その定期的かつ定量的な励行は、今更ながら元気に生きるための原点である。

 

 高齢になると、医者との付き合いも欠かすことはできない。体のメンテナンスは、脳や心のメンテナンスに先んじて長生きの大前提である。まずは医者を信じよう。投薬など医者のいうことはとにかくそのとおりやってみよう。もし、期待どおりいかなかったら、躊躇なく別のところを訪ねて見よう。セカンド・オピニオンは、医師の成長と患者の健康にとってきわめて大切なことがらである。

 

 高齢になると眉毛が伸びてくる。新陳代謝の停滞で、新しい毛がなかなか生えてこないので古いものが抜けられないためだそうだ。同じような事例は呼吸についてもいえる。新鮮な空気を胸一杯吸い込もうとしたら、まずは体内の汚れた空気を目一杯吐き出すことだ。古いものを思い切って捨て去り、新しい細胞を体いっぱいに増やそうではないか。後半生のしあわせは外にこそある。

                      (2023年7月12日 藤原吉弘)