白木蓮

[風を感じ、ときを想う日記](1177)3/9

木蓮

 

 河津桜が葉桜に変わろうとしているころ、もう一方で白木蓮がアッという間に開き、早くも満開になろうとしている。今年は開花が早そうだとは思っていたが、ここ数日の記録的な暖かさでそれが一気に加速したようだ。ご近所の庭はもとより、大通りの両脇にならんだ並木も見ごろを迎えた。平素は、その図体の割りには地味な存在だったが、ここにきて一気にアピールを始めたようだ。

 

 白木蓮とはよく名付けたものだ。まるで、ハスの花が空に浮かんでいるようだ。茎から下はまったく別のものなのに、よくもこれだけ似たものが生まれたものだ。名前の由来となったハスの花は、その下は中空の長い茎になっており、池の底に連なる蓮根へと繋がっている。一方の白木蓮は茎のつけ根は木の枝であり、大地に根を下ろした大木の幹から伸びてきたものだ。

 

 ご近所の庭に植えられたその大木は白いドーム状に整形され、青空をバックに遠くからでもはっきりと眺めることができる。つい数年前までは、それは完璧に近い形をしていたが、いま近くでながめるとところどころに小枝の枯れた部分が現われ、顔にできたシミのようにさえ見えてしまう。やはり、よる年波には勝てないといったところだろうか。

 

 その白い美しさは、盛りを過ぎると足下で茶褐色の汚れたゴミへと豹変する。ある人は、その落差こそ白木蓮の魅力だとのたまっていたが・・。