奥手のアサガオ

[風を感じ、ときを想う日記](1135)9/4

奥手のアサガオ

 

 梅雨も終わりのころだった。捜し物をしようと引き出しの中をまさぐっていたら、小さな紙包みが出てきた。「朝顔の種」と書かれており、昨年秋の日付が入っていた。いまから蒔いてもうまく育たないかもしれない、と思いながらも、とにかく鉢に植えてみることにした。

 

 旬日が過ぎたころ、双葉が数本芽生えてきた。そういえば、種に少し切れ目を入れておくと、発芽がよくなるのだったということを思い出した。後から思い出してもなんの役にも立たないが、その後も発芽は相次ぎ、新芽の数は二桁を超えた。数日後、そのうちの6本を残して大切に育ててやることにした。

 

 新芽は成長を早め、蔓となって支柱が欲しいとねだりはじめた。ありあわせの細い棒を探しだし、つごう6本をそれらのそばに立ててやった。その先端に目でもあるのではないかと思われるほど、蔓はその棒に敏感に反応した。夏休みも半ばにさしかかるころから、それらはぐんぐんと伸びはじめた。

 

 台風の話題が賑やかになりはじめた二百十日のその日、奥手のアサガオにやっと花が咲いた。たった一輪、それも小さな青い花だった。それでも、家内共々大いに喜んだものだ。それからというもの、毎朝雨戸を開けるのが楽しみになった。以来、「今朝は何輪咲いた」が朝の会話のスタートとなった。

 

 遅れてやってきた貧相な花だが、わが家の朝には欠かせない存在となった。