十代目の宇宙アサガオ

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[エッセイ 560]
十代目の宇宙アサガオ

 

 先日朝、ご近所からいただいたアサガオが突然花開いた。この花、なんと宇宙アサガオだそうだ。10年前、宇宙飛行士の山崎直子さんが、宇宙から持ち帰った種の子孫だという。最初の種は、日本宇宙少年団に手渡された。その後、いろいろな人の手を経てわが家までやってきた。あれから10年、純粋種を守りながら代を重ね、いまわが家にあるのは十代目のアサガオということになる。


 いただいた種には、山崎直子さんのメッセージも添えられていた。・・・日本宇宙少年団YAC)の朝顔の種を受けとった皆さんへ この種は、2010年4月のSTS-131ミッションで地球を238周、15日2時間47分10秒、スペースシャトルディスカバリー号とともに旅しました。この種、一粒一粒に、宇宙を旅した記憶が紡がれています。朝顔の記憶と共に皆さんの手で大切につなげていって下さい。この種をきっかけに、自分の住んでいる町、日本、宇宙と興味を広げていってくれたら嬉しいです。Fly to the Future!  YAC副団長 宇宙飛行士 山崎直子


 いただいた種は20粒近くあった。まだ寒い時期だったので、種まきは暖かくなるまで待つことにした。4月のある日、その種を大きな植木鉢2鉢に分けて、一個ずつ土に丁寧に差し込んでやった。しかし、芽が出たのは片方の鉢の4粒だけ、その4本の新芽も順調に茎を伸ばしはじめたのは2本だけだった。あとの2本は、本葉が3枚出たところで成長が止まってしまった。


 伸び始めた2本には、早速細い竹竿を添えてやった。しかし、あとの2本はその後もなかなか伸びてこようとはしなかった。ところが、その成長が止まった方の一本に、先日朝花が咲いた。真っ赤な美しい花だった。朝顔だけに、お昼までには萎んでしまったが突然のことなのでとにかく驚いた。そして、萎んだ花のすぐ脇に、開花を待つ新しい蕾が芽吹き始めている。


 なぜ、こんなに早く花が咲いたのだろう。いってみればまだ子供のうちである。数日経ったいまも不思議でならない。さらに、種を沢山蒔いたのに4本しか芽が出なかったことにも納得できないでいた。しかし、この方はすぐ謎が解けた。アサガオの種は殻が固く、自分の力ではそれをなかなか破ることができないのだそうだ。そこで、蒔くまえに傷をつけてやる必要があるのだそうだ。


 もう一つ、あれこれ調べたり考えたりしているうちに、摘芯をしてやる必要があることにも気がついた。さっそく、順調に伸びている方の2本を途中から切ってやった。数日後、残しておいたそれぞれの葉っぱのつけ根から新芽が出だした。これで、横に広い賑やかな姿に仕立てることができそうだ。


 紆余曲折を経ながらも、今年の夏は十代目の宇宙アサガオが楽しめそうだ。
                      (2020年6月28日 藤原吉弘)