スズメバチ

[エッセイ 636]

スズメバチ

 

 うだるような暑い日だった。朝ドラが終わる頃には、かねてお願いしていた植木屋が庭木の剪定にきてくれた。私は、「ちょっと出かけてくるのでよろしくね!」といって、恒例のクラブ活動に出かけていった。2時間ばかりして帰ってくると、その植木屋が、「大変だったんだよ!」といって、スズメバチの巣がキンモクセイの茂みの中にあったことを話しはじめた。

 

 なんでも、庭に入っていくとハチが飛び回っており、様子がおかしいと思ったそうだ。よく見ると、キンモクセイの枝の陰に大きなスズメバチの巣があった。市役所に頼もうかとも思ったが、それだと半日がかりになってしまい、予定が大幅に狂ってしまう。仕方なく、自宅から殺虫剤をもってきて駆除したという。それでも、ずいぶん時間をとられてしまったということだった。

 

 なるほど、道路脇に捨てられた巣は割れてはいたがバレーボールほどもある大きなものだった。中には、白い幼虫がびっしりと詰まっていて、まだ少しうごめいていた。佃煮にでもしたいねと冗談をいったが、内心は「ゾッ」とする思いだった。こちらは、毎日そばを通り、その木の下も掃除したりしていたのだから。それでも、今までまったく気づかなかった。よく襲われなかったものだ。

 

 そのスズメバチは全世界にいるが、その中心域は東南アジアだそうだ。“スズメ”の名の由来はスズメほども大きく、巣の模様がその様相に似ていることからそう呼ばれるようになった。一匹の女王蜂を中心に社会を作る。巣を守るためには凶暴となり、好戦的とさえ思えるほど攻撃性が高い。日本では、毎年20人くらいがその犠牲となっている。1984年には、なんと73人も亡くなったという。野生生物の被害としては最大のものだそうだ。

 

 そんなことから、もしスズメバチに刺されたらどうすればいいか調べてみた。もし刺されたら、①傷口を強くしぼりながら水でよく洗う。口では絶対に吸わない。②傷口を水でよく冷やす。③抗ヒスタミン軟膏かステロイド軟膏を塗る。アンモニアは意味がない。④次の場合はすぐ病院へいく――発疹、吐き気、呼吸困難、目を刺されたときなど。首、頭、顔、心臓に近いところ、そしてたくさん刺されたときももちろん危険だ。以前にハチに刺されたことのある人は、2度目のときはショック症状を起こす可能性があるので大事をとること。

 

 私は、ハチに刺されたことはないが、子供のころよくアナフィラキシーを発症していていた。一方、家内は何年か前に小さなハチに刺されたことがある。いずれも、今度ハチに刺されるとかなり危険なことになるかもしれない。以前、車庫に2度ばかりアシナガバチに巣を作られたことがあるが、スズメバチは初めてである。いずれにしても、2度と巡り会いたくない忌まわしい出来事である。

                          (2022年8月8日 藤原吉弘)