[風を感じ、ときを想う日記](1102)3/21
宴のあと
あれだけ華やかだったカワヅザクラが、数日のうちに様相を一変させてしまった。美しかった濃いピンクの花びらが散り、その後に緑色の新芽が顔を出し始めている。一気にではなく、時間をかけて順々に入れ替わっていく。大役を果たして去りゆくもの。これから新しい役割を担って登場してくるもの。新旧交代の様は、悲喜こもごも感動的なシーンですらある。
その足下には、ピンクの絨毯が広がっていた。重責を果たした花びらたちの残骸である。もしここが堀端だったら、ハナイカダと形容される場面となるであろう。降り積もった花びらを敷物に例えてはみたが、その様はシワひとつない真新しい絹の織物のようである。あたかも、薄いピンクの透き通るようなレースを、地面に広げたようにさえみえる。
いまここは、宴の終わった直後といったところだ。もし、ここが上野公園だったら、プラ袋や弁当の空箱、果てはジュースやビールの空き缶までが散らかし放題になっていたかもしれない。ところがここには、酔客の残したゴミなど一つとして落ちていない。その美しさは、真っ白い砂の表面にレーキの筋目がくっきりと残る、あの京都・天竜寺の、枯山水の庭園のようですらある。
宴のあとのはかなさと美しさを、そして希望に膨らむ新旧交代のエネルギーを、肌で実感させてくれる春のお墓参りのころである。