[エッセイ 622]
二の意味
今日は、歴史上めったに遭遇することのない「2」がたくさん並んだ日である。2022年2月22日と、2が6つも並ぶ100年に一度しか巡り会うことのない貴重な日である。さらに夜が更けてくると、夜半前には22時22分22秒と、「2」があわせて12個も並ぶ瞬間までやってくる。めでたい日なのかそうでもないのか。特別意味がある日なのか、単なる通過点なのか。
いままで、その意味など考えてみたこともなかったが、中国の陰陽の考え方を反映した伝統的な暦ではその考え方がいまも脈々と受け継がれている。奇数は陽、偶数は陰で、例えば陽の重なる1月1日、3月3日、5月5日、7月7日そして9月9日は特別おめでたい日としてお祝いされている。最大の陽数9が重なる9月9日は、重陽の節句として一番おめでたい日とされている。
この考え方からいけば、最小とはいえ陰数がたくさん重なる今日は、もっともめでたくない日ということになる。しかし、どこからも、誰からも、もちろん政府からも、陰がたくさん重なる“重陰の日”だから気をつけようなどという話は聞いたことがない。もっとも、陰陽が反映されるのは、本来なら旧暦であって新暦とは一線が画されており元々なんの心配もない話である。
そんなことから、ここでは単純に「2」という数字について遊びがてら考えてみることにする。2とは、ものの数を表わす言葉であり、偶数の最小の数字である。その最小の偶数という概念から、2を織り込んだいろいろな熟語が生まれた。二股、二子、双子、二路線、二分化、二人三脚、二者択一、二頭政治、一石二鳥、唯一無二、天は二物を・・、二頭を追うものは・・、などたくさんある。
そして、それら二つだけという概念から、相反する二つの事柄を端的に表わす言葉が生まれたのではなかろうか。表裏、善悪、男女、陰陽、光と闇、奇数偶数、といったものである。こうした数の概念から順番を表わす言葉へとつながっていったのかもしれない。二番、二等、二次、次席、次長、次回、次期、次作、次点、二番煎じ、二重底、二束三文、などなどである。
実は、数へのこだわりは日常生活、とくに行事には色濃く残っている。贈り物をするときの数や金額は必ずそれにこだわる。金一封は一万円や三万円はあっても二万円はない。子供の節句は、3月3日や5月5日にはあっても2月2日にはない。逆に、パチンコ店には2番はあっても9番の台は置いていない。
世界中が平和で、みんながしあわせに暮らすためには立派なリーダーが必要である。しかし、そのNO1には、補佐役としての優秀なNO2の存在が欠かせない。一方、世の中の基本的な単位は男女のペアである。一つひとつの温かい家庭の営みが、平和な世界の構築と繁栄へとつながっていく。
(2022年2月22日 藤原吉弘)