[エッセイ 617]
町内の老人会である「ゆうゆうクラブ」は、毎月第3土曜日の朝7時から公園の清掃を行っている。通常は月1回だが、落ち葉が集中的に積もる12月だけは、さらに第4土曜日にも行うことにしている。おおかたの落葉樹は、12月上旬くらいまでには散ってしまうが、5本あるモミジバフウだけはこの頃が落葉の最盛期にあたる。大木なので葉っぱの量が多く、全部が一斉には落葉せず、木によって時期が少しずつずれるため長期に亘って落葉し続けるのだ。
そのモミジバフウは、漢字では「紅葉葉楓」と書く。APG植物分類体系ではフウ科の落葉広葉樹の高木とされている。旧来のクロンキスト分類体系ではマンサク科となっているのでどっちがどうなのかちょっと戸惑ってしまう。樹名に楓の文字がついているが、日本のモミジやカナダのメープルともまた違う仲間だそうだ。ただ、樹形に風格があり、葉っぱの形や紅葉がきれいなことから、それらと同様、公園や街路など公共の場の主要なアイドルである。
モミジバフウは別名をアメリカフウと呼ばれ、原産は北アメリカ中南部で大正時代に日本に伝来してきたそうだ。落葉広葉樹の高木で、日本では20~25メートルになるが原産地では45メートルもの高さになるという。樹皮は生長するに従いコルク層が発達して縦に裂けるようになる。互生した葉っぱはカエデに似ており、5~7裂した掌状で光沢があり晩秋に紅葉する。
花は4月ごろ、雌雄同株で、秋にはウニのような実をつける。大木となるが萌芽力があり、剪定に強いという。多湿を好み耐寒性、耐暑性にも優れ、肥料も事実上必要ないという。どこででも育つという、植える側にとってきわめて都合のいい樹木である。街路や公園に植えられることが多く、わが町内の木も、毎年縦長の円錐形に剪定されて美しい形でみんなを楽しませてくれている。なお、同じ仲間に中国原産のフウという種類があるが、こちらの葉っぱは3裂だそうだ。
モミジバフウの花言葉は「輝く心」、「非凡な才能」だそうだ。葉っぱの色の付き方に個体差があり紅葉のグラデーションが長期間楽しめるとされている。わが町内の5本の木も、一本一本それぞれが、しかも個々の木でも色は部位によってかなりの違いがでる。落葉の進行状況ももちろんまちまちである。風当たりなど外的条件の違いでそんな差が出るのだろうと思っていたが、そうした環境の差より個体毎の差の方がずっと大きいようだ。
春は緑の新芽が、夏には葉っぱの陰に群れるたくさんのセミが、秋から冬にかけては紅葉のグラデーションが私たちを存分に楽しませてくれる。そして、クリスマスがきても、まだ紅葉の残り火でみんなを元気づけようとしてくれている。この分だと、来月の第3土曜日も、名残りの落ち葉集めが存分に楽しめそうだ。
(2021年12月24日 藤原吉弘)