[風を感じ、ときを想う日記](1040)6/3
二宮のハナショウブ
二宮せせらぎ公園にハナショウブを見に行った。例年、6月初めごろ訪れていたような記憶があるので、ひょっとしたらもう遅いかもしれないという心配もあった。今年は、開花が全般に繰り上がっているためだ。しかし、行ってみると、花はちょうど見ごろだった。それも、例年以上に見事な咲きっぷりだった。
緑に囲まれた谷戸に、柔らかな風がさわさわと吹き抜けていく。小川ともいえない小さな流れに、透き通った水が静かに流れていく。時折、シシオドシの竹の音が静寂を破って谷間にこだまする。訪れる人は少なく、マスクなどまったく不似合いな環境にあった。口を思い切り開けて、大気を胸一杯吸ってみた。
三方を緑の小山に囲まれ、唯一開けている下流方向も数百メートル先には同じような丘陵が連なっている。結局、周りはすべて新緑、そしてそのまま澄んだ青空へと続く。目を落とすと、そこにだけ一面に紫や薄紫の花が咲いている。くの字が重なるように続く木道を、ゆっくりとした足どりで進んでいった。
乾地に咲くアヤメと違って花は大きい。その形も、複雑で見応えがある。色も、紫から白まで両極はもとより中間色も多様である。ピンク系や黄色まである。単に色の多様性というだけでなく、色柄まで複雑に絡み合っている。
かつては、その花のために、わざわざ利根川周辺の水郷まで出かけていったという。いまは、幸いなことに1時間以内でその楽しみにたどり着くことができる。